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【そして、バトンは渡された】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:瀬尾まいこ)

ヨムネコ

「家族ってなんだろう」という問いに、こんなにも優しく答えてくれる小説があるでしょうか。

瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』は、2019年本屋大賞を受賞した作品です。幼い頃に母親を亡くし、3人の父と2人の母の間を「リレー」されながら育った優子という女の子の物語を描いています。血のつながらない親たちに育てられた彼女は、それでも誰からも愛情をたっぷり注がれてきました。

普通じゃない家族の形を描きながら、読み終わったときには心が温かくなる。この本には、家族の本質が詰まっています。

『そして、バトンは渡された』ってどんな本?

本屋大賞を受賞してから、多くの人に読まれ続けているこの作品。まずは基本情報から見ていきましょう。

本の基本情報

項目内容
著者瀬尾まいこ
出版社文藝春秋
発売日2018年2月
受賞歴2019年本屋大賞受賞

文庫版は2020年9月に発売されています。本屋大賞を受賞したことで、この作品は一気に注目を集めました。

なぜこんなに話題になったの?

この本が話題になった理由は、「家族」という普遍的なテーマを、まったく新しい角度から描いたからです。

3人の父、2人の母の間を渡り歩いた優子。普通に考えれば、不幸な生い立ちに思えるかもしれません。でも、読み進めていくと、その考えは完全にひっくり返されます。血のつながりがなくても、本当の家族になれるということを、この物語は証明してくれるのです。

本屋大賞は書店員が「いちばん売りたい本」を選ぶ賞です。つまり、実際に本を扱うプロたちが心から推薦した作品なのです。

どんな人におすすめ?

家族関係で悩んでいる人にこそ読んでほしいです。「普通の家族」という概念に縛られている人、温かい気持ちになりたい人にもぴったりでしょう。

瀬尾まいこさんの作品が好きな人なら、間違いなく楽しめます。彼女の作品には、いつも人の優しさと温かさが溢れているからです。また、読書感想文を書く必要がある中高生にもおすすめできる作品です。テーマが明確で、自分の体験と結びつけて考えやすい内容になっています。

著者・瀬尾まいこさんについて

この優しい物語を書いた瀬尾まいこさんとは、どんな作家なのでしょうか。

中学教師から作家へ

瀬尾まいこさんは、大阪府出身の作家です。もともとは中学校の国語教師をしていました。

教師として働きながら小説を書き続け、2001年に『卵の緒』で坊っちゃん文学賞を受賞してデビューしました。その後も教師を続けながら執筆活動を行っていましたが、現在は作家業に専念しています。教師としての経験が、彼女の作品に深みを与えているのかもしれません。

温かい作風が人気の理由

瀬尾まいこさんの作品には、共通した特徴があります。それは、登場人物たちの優しさです。

どの作品を読んでも、人間の温かさや思いやりが丁寧に描かれています。決して劇的な展開があるわけではありません。でも、日常の中にある小さな幸せや、人と人とのつながりの尊さを、静かに、しかし確実に伝えてくれるのです。だからこそ、読んだ後に心が穏やかになるのでしょう。

瀬尾まいこさんの代表作

デビュー作の『卵の緒』をはじめ、『幸福な食卓』『天国はまだ遠く』『戸村飯店 青春100連発』など、多くの作品を発表しています。

どの作品も、家族や友人との関係性を丁寧に描いています。『そして、バトンは渡された』以外にも、心温まる作品がたくさんあります。この作品が気に入ったら、他の作品も読んでみる価値があるでしょう。特に『幸福な食卓』は、家族をテーマにした名作として知られています。

『そして、バトンは渡された』のあらすじ(ネタバレあり)

ここからは、物語の詳細なあらすじを紹介します。ネタバレを含むので、未読の方はご注意ください。

実母との別れと最初の家族

優子は2歳のときに実母を亡くしました。実の父親である水戸秀平と二人で暮らしていた優子ですが、やがて新しい母親がやってきます。

それが梨花でした。明るく自由奔放な性格の梨花は、優子を「みぃたん」と呼び、我が子のように愛しました。梨花と過ごす日々は、優子にとって幸せな時間でした。でも、その幸せは長くは続きませんでした。

梨花との出会いと別れ

水戸秀平がブラジルへの海外赴任を決めたとき、家族は選択を迫られました。梨花はブラジル行きに反対しました。

そして優子も、梨花と日本に残ることを選んだのです。こうして、実の父とは別れることになりました。その後、梨花は優子のためにより良い環境を与えたいと考え、不動産会社社長の泉ヶ原という老人と再婚します。泉ヶ原の家にはグランドピアノがありました。ピアノを弾きたいと言った優子のために、梨花はこの結婚を選んだのです。

森宮という”最後の父親”

泉ヶ原との結婚生活はわずか3ヶ月で終わりました。梨花は優子を連れて家を出て、今度は森宮壮介という東大卒の男性と暮らし始めます。

森宮は優子よりたった20歳年上でした。最初は距離を感じていた二人でしたが、森宮の優しさと思いやりに触れるうちに、次第に心を通わせていきます。そしてある日、梨花は優子を残して姿を消してしまいました。こうして、優子は森宮と二人で暮らすことになったのです。

高校生活と初恋

高校2年生になった優子は、相変わらず森宮と二人暮らしを続けていました。泣きたい場面でも無駄に笑顔を振りまく優子は、クラスでも少し浮いた存在でした。

高校最後の年、卒業式の合唱祭の伴奏者に選ばれた優子。技術不足にもかかわらず押し付けられた役割でしたが、そこで5組の伴奏者である早瀬賢人君と出会います。優れたピアノの腕前を持つ早瀬君に、優子は心惹かれていきました。森宮に励まされ、優子は何とか卒業式のピアノ演奏を成功させます。

社会人になって訪れた結婚

高校・短大を卒業した優子は、定食屋で働くようになりました。そして数年後、早瀬賢人と再会した優子は、結婚を誓い合います。

結婚が決まった優子は、全ての親に会いに行きました。実父の水戸秀平は日本に帰国していました。そして、行方不明だった梨花からも便りが届きます。しかし、その後すぐに泉ヶ原から、梨花の死を看取ったとの知らせが届いたのです。

結婚式で明かされる真相

やがて結婚式の日、式場には3人の父が揃っていました。森宮は、実の父である水戸と一緒にバージンロードを歩くことを提案しましたが、優子はそれを許しませんでした。

優子が選んだのは、森宮と一緒に歩くことでした。そして森宮は、「親たちから渡されたバトンを、しっかり受け取れ」と、花婿の早瀬に優子を託したのです。この瞬間、タイトルの意味が明らかになります。優子の人生は、様々な親たちが愛情というバトンを繋いできた物語だったのです。

『そして、バトンは渡された』を読んだ感想

この本を読んで、私の中で何かが変わりました。家族についての考え方が、根本から変わったのです。

“家族”の定義が変わった

血のつながりだけが家族じゃない。頭では分かっていても、心の底から納得するのは難しいものです。

でも、この本を読むと、その言葉の本当の意味が分かります。優子は3人の父と2人の母に育てられました。どの親も、優子を心から愛していました。実の親子でなくても、一緒に過ごす時間や思いやりによって、本物の家族になれるのです。家族の形は一つじゃありません。それぞれの形があっていいのだと、この物語は教えてくれます。

梨花の行動に隠された愛情

最初は、梨花という人物が理解できませんでした。夫を何度も変え、自由に生きてきた女性。

でも、読み進めるうちに分かってくるのです。梨花の行動には、すべて優子への愛情があったということが。ピアノを弾かせてあげたくて泉ヶ原と結婚し、より良い環境を与えたくて森宮を選んだのです。自分の幸せよりも、優子の幸せを優先していました。梨花という人物は、優子にとって本当の母親だったのです。

森宮さんの優しさに泣けた

20歳しか離れていない”父親”である森宮さん。最初は、この設定に驚きました。

でも、森宮さんの優しさには本当に心を打たれます。高校生の優子を責任を持って育て、もう親が代わることはないという安心感を与えてくれました。始業式の朝にカツ丼を出したり、年頃の女の子にニンニクたっぷりの餃子を二日連続で出したりと、どこかずれたところもあります。でも、そのずれた行動にも、優子への愛情が溢れているのです。誰かのためと思えることが生きがいになり、未来が二つになったと喜べる森宮さんは、本当に素敵な人物でした。

料理の描写が温かい

この物語には、たくさんの料理が登場します。森宮さんが作る料理、梨花が作る料理、泉ヶ原との食卓。

食事のシーンが、家族の温かさを象徴しているのです。一緒に食卓を囲むこと、誰かのために料理を作ること。そういった日常の行為に、愛情が詰まっています。読んでいるうちに、お腹が空いてくるほど美味しそうな描写です。でも、それ以上に心が満たされていくのを感じました。

優子の前向きさに救われる

何度も親が変わるという経験をしてきた優子。それでも、彼女は前向きに生きています。

泣きたい場面でも笑顔を振りまく習性。それは、周囲から見れば少し変わっているかもしれません。でも、その笑顔の裏には、すべての親からもらった愛情があるのです。環境が変わることを恐れず、新しい家族を受け入れてきた優子の強さ。彼女の生き方から、私たちも学ぶことがたくさんあります。

この本の”バトン”が意味するもの

タイトルにある「バトン」という言葉。これが、この物語の核心です。

愛情のリレー

バトンを渡した走者は、次の走者の走りを見守るのみです。決して手を出すことはありませんし、手を出すことはルール違反です。

でも、みんなバトンのことを忘れたりはしません。自分の役割が終わった後もバトンの受け渡しをずっと見守り続け、バトンが未来に受け渡されていくことに声援を送り続けます。優子の人生は、まさにこのバトンリレーでした。それぞれの親が、自分にできる愛情を注いで、次へと渡していったのです。

料理・ピアノ・笑顔というバトン

バトンは、抽象的な愛情だけではありません。梨花はピアノを弾く環境を優子に与えました。

泉ヶ原は豊かな生活を提供しました。森宮は毎日の食事と安心を与えました。それぞれが、自分にできる形で優子を支えたのです。そして優子は、そのすべてを受け取って成長しました。料理を作る喜び、ピアノを弾く楽しさ、笑顔でいることの大切さ。すべてが、次の世代へと渡されるバトンなのです。

次の世代へつなぐ思い

結婚式で、森宮は早瀬にバトンを渡しました。「親たちから渡されたバトンを、しっかり受け取れ」という言葉。

これは、優子がこれまで受け取ってきた愛情を、これからは早瀬と一緒に次の世代へ渡していくという意味です。バトンは止まりません。ずっと繋がっていくものなのです。優子と早瀬の子どもたちにも、きっとこのバトンは渡されていくでしょう。愛情のリレーは、永遠に続いていくのです。

作品に込められたテーマとメッセージ

この作品には、いくつもの大切なメッセージが込められています。

血のつながりだけが家族じゃない

これが、この作品の最大のテーマです。優子と親たちには、血のつながりがほとんどありません。

でも、誰も否定できないほど、彼らは家族でした。家族とは、共に過ごす時間や思いやりによって築かれるものです。血縁関係だけで家族を定義するのは、あまりにも狭い考え方なのかもしれません。この物語は、家族の多様な形を象徴しています。どんな形でも、愛情があれば家族になれるのです。

人生には必ず希望がある

優子の人生は、決して平坦ではありませんでした。でも、彼女は幸せになりました。

どんなに大変な状況でも、必ず誰かが支えてくれます。そして、その経験は無駄にはなりません。すべてが、未来への糧になるのです。この物語を読むと、人生に対する希望が湧いてきます。今がどんなに辛くても、必ず良い日が来るのだと信じられるのです。

日常の中にある幸せ

この作品には、劇的な展開はあまりありません。描かれるのは、日常の小さな出来事ばかりです。

でも、その日常にこそ幸せがあるのだと、この物語は教えてくれます。一緒に食事をすること、会話をすること、笑い合うこと。そういった何気ない瞬間に、本当の幸せが隠れているのです。特別なことをしなくても、愛情があれば幸せになれます。

人とのつながりが人を育てる

優子は、たくさんの人に育てられました。それぞれの親から、違うものを学びました。

人は一人では生きていけません。様々な人とのつながりの中で、成長していくものです。優子の人生がそれを証明しています。親だけでなく、友人や先生、周囲の人々すべてが、優子を育てる力になりました。人とのつながりこそが、人生を豊かにするのです。

読書感想文を書くヒント

この本は、読書感想文の題材としても最適です。いくつかのポイントを押さえれば、書きやすくなるでしょう。

「バトン」という言葉に注目する

タイトルにもなっている「バトン」という言葉。これをキーワードに感想文を展開すると、まとまりやすくなります。

バトンが何を象徴しているのか、自分なりの解釈を書いてみましょう。愛情のリレー、世代を超えた繋がり、人から人へと渡されるもの。様々な解釈ができる言葉です。結婚式のシーンで明かされるバトンの意味について、どう感じたかを書くのも良いでしょう。

自分が受け取ったバトンを考える

優子が親たちから受け取ったように、私たちも誰かからバトンを受け取っています。

自分が今まで、誰からどんなバトンを受け取ってきたか考えてみましょう。親から、先生から、友人から。様々な人が、あなたに何かを渡してくれたはずです。それを具体的に書くことで、感想文に深みが出ます。そして、自分が次の世代に何を渡したいかも考えてみると良いでしょう。

家族の形について自分の考えを書く

「家族とは何か」という問いに、自分なりの答えを出してみましょう。

この本を読む前と後で、家族についての考え方が変わったかもしれません。血のつながりだけが家族じゃないというメッセージについて、どう思うか書いてみてください。自分の家族と比較するのも良いでしょう。同じ点、違う点を考えることで、家族の本質が見えてくるはずです。

印象に残った場面から書き始める

感想文は、印象に残った場面から書き始めると書きやすくなります。

結婚式のシーン、梨花の行動、森宮さんとの日常。どの場面が心に残ったか、なぜ心に残ったのかを書いてみましょう。具体的な場面を引用することで、説得力のある感想文になります。そこから、作品全体のテーマへと話を広げていけば良いのです。

こんな人にこそ読んでほしい

この本は、特定の人にこそ届けたい作品です。

家族関係で悩んでいる人

家族との関係が上手くいかない人、家族に対して複雑な感情を抱いている人。

この本は、そんな人たちに希望を与えてくれます。家族の形は一つじゃありません。今の状況が辛くても、別の形の家族を見つけることができるのです。血のつながりがすべてではないということ。この物語が、それを優しく教えてくれるでしょう。

“普通の家族”という概念に縛られている人

「普通の家族」とは何でしょうか。父と母がいて、子どもがいて、みんな一緒に暮らしている。

そんな形だけが家族ではありません。優子の家族は、決して「普通」ではありませんでした。でも、誰よりも幸せな家族だったのです。普通という概念に縛られる必要はないのだと、この本は教えてくれます。自分の家族の形を、誇りに思えるようになるはずです。

温かい気持ちになりたい人

疲れているとき、心が乾いているとき。そんなときこそ、この本を読んでほしいです。

ページをめくるたびに、心が温かくなっていきます。登場人物たちの優しさに触れると、自分も優しくなれる気がします。世界は捨てたものじゃないと思えるのです。読み終わった後、きっと誰かに優しくしたくなるでしょう。

瀬尾まいこさんの作品が好きな人

瀬尾まいこさんの他の作品が好きな人なら、この本も絶対に気に入るはずです。

彼女特有の温かい作風、丁寧な人物描写、心に染み入る言葉の数々。すべてが詰まった作品です。瀬尾まいこさんの作品をまだ読んだことがない人にとっても、最初の一冊として最適でしょう。この本から、彼女の作品世界に入っていくのも良いかもしれません。

おわりに

『そして、バトンは渡された』は、家族の本質を描いた物語でした。

読み終わった今、私の中で「家族」という言葉の意味が広がっています。血のつながりだけが家族を定義するのではなく、愛情と時間が本当の絆を作るのです。優子の人生は、決して平坦ではありませんでした。でも、彼女は幸せでした。なぜなら、すべての親から愛情というバトンを受け取ってきたからです。

この物語を読んで、あなたも自分が受け取ってきたバトンについて考えてみてください。そして、次の世代に何を渡したいか、想像してみてください。バトンは、永遠に繋がっていくものなのですから。

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