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【その可能性はすでに考えた】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:井上真偽)

ヨムネコ

本格ミステリを読んでいると、探偵が華麗に謎を解く瞬間に感動しますよね。でも「その可能性はすでに考えた」は、そんな常識をひっくり返す作品です。この小説では、探偵が事件を解決するのではなく、奇蹟を証明しようとします。一体どういうことなのでしょうか?

井上真偽さんが生み出したこの物語は、推理バトルという新しい形式を採用しています。次々と現れる挑戦者たちが提示する仮説を、主人公の探偵が論理で否定していく展開は、まるでバトル漫画のよう。頭をフル回転させながら読み進める体験は、きっとあなたの読書観を変えるはずです。

「その可能性はすでに考えた」とはどんな本?

2015年に発売された本格ミステリで、今もなお多くの読者を魅了し続けています。この作品が特別なのは、従来の探偵小説とは全く違うアプローチを取っているからです。

1. 本の基本情報:2015年発売の本格ミステリ

基本的な情報を整理しておきましょう。

項目内容
タイトルその可能性はすでに考えた
著者井上真偽
出版社講談社(講談社ノベルス/講談社文庫)
発売日2015年9月10日(ノベルス)、2018年2月14日(文庫)
ジャンル本格ミステリ、多重解決ミステリ

この本は第16回本格ミステリ大賞の候補にもなりました。各種ミステリランキングでも高い評価を受けています。発売から10年近く経った今でも、書店のミステリコーナーで見かけることが多いです。

それだけ長く愛されているということは、作品に本物の魅力があるということでしょう。実際、一度読み始めると止まらなくなる中毒性があります。

2. なぜ今も読まれているのか?

理由は明確です。この作品が「多重解決ミステリ」という斬新な形式を採用しているからです。

普通の推理小説では、探偵が一つの真相にたどり着いて終わりますよね。でもこの小説は違います。次々と別の探偵や推理家が現れて、それぞれが異なる仮説を提示するのです。そして主人公の探偵・上苙丞が、その仮説を論理で否定していきます。

「その可能性はすでに考えた」という決め台詞とともに。この痛快さが、読者の心を掴んで離しません。推理バトルという構図自体が新しく、読んでいてワクワクします。

論理とロジックの面白さを存分に味わえる作品だからこそ、本格ミステリファンから支持され続けているのでしょう。

3. 物語の舞台と設定

舞台は現代の日本です。しかし物語の核心は、15年前に起きた凄惨な事件にあります。

山間の小さな村で起きたカルト宗教団体の集団自殺事件。周囲を崖に囲まれた閉鎖的な環境で、信者たちが次々と首を斬られて命を落としました。唯一生き残ったのが、当時少女だった渡良瀬莉世です。

彼女には不思議な記憶があります。首を斬られたはずの少年が、自分を抱えて運んでくれたという記憶です。物理的にありえないこの現象を、上苙丞は「奇蹟」だと考えます。そして、その奇蹟を証明するために全ての可能性を否定しようとするのです。

中国風の雰囲気が漂う設定も特徴的です。登場人物の名前や言葉遣いに中国語が頻繁に登場し、独特の世界観を作り出しています。

著者・井上真偽について

井上真偽という名前を見た瞬間、「真実」と「偽り」という言葉が浮かびませんか? このペンネームからして、作者のセンスが光っています。

1. 東京大学卒の謎多き作家

井上真偽さんは神奈川県出身で、東京大学工学部を卒業しています。年齢や性別は非公開で、謎に包まれた作家です。

東大工学部という経歴が、作品の論理的な構成に活かされているのでしょう。読んでいると「この人、本当に頭がいいな」と思わずにはいられません。数学の証明問題を解いているような感覚に陥ります。

ミステリ作家として活動する一方で、その素性を明かさないスタイルは、作品の世界観とも重なります。読者は作者の人物像ではなく、純粋に作品そのものと向き合えるのです。

2. メフィスト賞受賞からの華々しいデビュー

井上真偽さんは2014年、『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞してデビューしました。

このデビュー作にも、「その可能性はすでに考えた」の主人公・上苙丞が登場します。つまり上苙シリーズとして読むなら、『恋と禁忌の述語論理』から読むのが順番としては正しいです。ただ、「その可能性はすでに考えた」から読んでも全く問題ありません。

デビューからわずか1年後の2015年に、この「その可能性はすでに考えた」を発表し、ミステリ界に衝撃を与えました。新人とは思えない完成度の高さです。続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』も発表し、シリーズとして人気を博しています。

3. 井上真偽の作品の傾向

井上真偽さんの作品は、本格ミステリの新しい可能性を切り開いています。

特徴的なのは、論理を徹底的に追求する姿勢です。トリックや推理の過程が非常にロジカルで、読者の知的好奇心を刺激します。代表作には『探偵が早すぎる』シリーズがあり、こちらはテレビドラマ化もされました。

どの作品も、既存のミステリの枠を超えようとする野心を感じます。ただ奇をてらっているのではなく、ミステリというジャンルへの深い愛情と理解があるからこその挑戦です。城平京、麻耶雄嵩、森博嗣といった作家が好きな人には、きっと刺さるはずです。

こんな人におすすめ!

読む人を選ぶ作品かもしれません。でもハマる人は徹底的にハマります。どんな人に向いているのか、具体的に見ていきましょう。

1. 本格ミステリが大好きな人

本格ミステリの醍醐味は、論理的な推理と意外な真相ですよね。この作品はその魅力を存分に味わえます。

謎解きのプロセスが丁寧に描かれていて、読者も一緒に考えることができます。ただし、かなり頭を使います。普段使っていない脳の部分まで総動員する感覚です。でもだからこそ、理解できたときの爽快感は格別なのです。

トリックの複雑さや論理の精密さは、本格ミステリファンを満足させるレベルに達しています。「こんな発想があったのか」と驚かされる場面が何度もあるはずです。

2. ロジカルな推理バトルを楽しみたい人

推理バトルという構図が好きな人には、間違いなくおすすめです。

次々と現れる挑戦者たちが、それぞれ独自の論理で事件を解き明かそうとします。元検事の大門、宋儷西、八ツ星聯など、個性的なキャラクターが登場し、上苙丞と知恵比べを繰り広げます。まるでバトル漫画を読んでいるような興奮があります。

「その可能性はすでに考えた」という決め台詞で、相手の推理を次々と論破していく展開は爽快です。論理で戦う知的なバトルが好きなら、絶対に楽しめます。

3. 個性的な探偵キャラクターが好きな人

上苙丞という探偵は、かなり変わっています。普通の探偵は真相を解明しますが、彼は奇蹟を証明しようとします。

そして主人公はその探偵ではなく、中国人女性のヤオ・フーリンです。彼女は金だけを信じて裏社会で暗躍する高利貸しという設定。冷徹で非道なのに、上苙に対しては妙に情が深く、その関係性が面白いのです。

登場人物がみんな非常識で、癖が強いです。でもそれぞれに魅力があり、キャラクター小説としても楽しめます。ライトノベル風の要素もあるので、そういうノリが好きな人にもおすすめです。

あらすじ(ネタバレあり)

ここからは物語の核心に触れていきます。まだ読んでいない方は、ご注意ください。

1. 十数年前の集団自殺事件

物語は15年前の凄惨な事件から始まります。周囲を崖に囲まれた山間の小さな村で、カルト宗教団体の集団自殺が起きました。

信者たちは次々と首を斬られ、命を落としていきます。状況からして外部犯の可能性は低く、信者たちが互いに殺し合ったと考えられました。グロテスクで残虐な描写が続きますが、それが事件の異常性を際立たせています。

唯一生き残ったのが、当時少女だった渡良瀬莉世です。彼女は村から脱出したものの、その記憶は断片的でした。そして十数年が経ち、彼女は探偵・上苙丞の元を訪れます。

2. 依頼者・渡良瀬莉世の記憶

渡良瀬莉世が持つ記憶は、物理的にありえないものでした。

彼女と一緒に脱出を図った少年がいました。たしかに途中まで一緒に歩いていたはずです。でも村から脱出したとき、彼女の近くの地面には少年の生首が落ちていたのです。首を斬られた少年が、どうやって彼女を運んだのか。

「自分が少年を殺したのではないか」という疑念が、彼女を苦しめていました。その真相を知りたくて、上苙の元を訪れたのです。でも上苙の目的は、事件の解決ではありませんでした。

3. 奇蹟を証明する探偵・上苙丞

上苙丞は変わった探偵です。彼の目的は、奇蹟を証明することなのです。

そのために彼が取る方法は、奇蹟以外のすべての可能性を否定することでした。つまり「この事件は奇蹟でしか説明できない」という結論に持っていくために、あらゆる仮説を論破していくのです。なぜそこまで奇蹟にこだわるのか。その理由は物語の核心に関わっています。

上苙は渡良瀬の話を聞き、この事件に奇蹟の可能性を見出します。そして調査を開始しました。でも彼の前に、次々と挑戦者が現れるのです。

4. 次々と現れる挑戦者たち

元検事の大門、宋儷西、八ツ星聯など、個性的なキャラクターが登場します。

彼らはそれぞれ独自の論理で、事件の真相を説明しようとします。しかも提示されるトリックは、どれも荒唐無稽なものばかりです。普通なら一笑に付されるような内容を、彼らは真剣に論じます。

上苙は不利な立場に立たされます。相手は自由に仮説を立てられるのに、上苙は証拠に基づいて否定しなければならないからです。それでも彼は「その可能性はすでに考えた」という決め台詞とともに、次々と仮説を論破していきます。

このバトル展開が、読者を飽きさせません。

5. 推理バトルの結末

上苙は毒で苦しみながらも、推理バトルに勝利していきます。

すべての可能性を否定した後、彼は最終的な仮説を披露します。その内容は、読者の想像を超えるものでした。奇蹟を信じる彼の姿勢と、論理を重んじる姿勢が、最後に一つにつながるのです。

結末については、ぜひ実際に読んで確かめてほしいです。最終的にすべての推理が意味を持ち始め、全てが繋がる瞬間は圧巻です。読み終わった後、もう一度最初から読み直したくなるはずです。

実際に読んだ感想・レビュー

この本を読み終わったとき、頭の中がぐるぐる回っていました。それくらい刺激的で、印象深い作品です。

1. 「その可能性はすでに考えた」という決め台詞が最高

この決め台詞の痛快さといったら!

相手が自信満々に提示した仮説を、上苙がこの一言で論破していく瞬間は、読んでいて快感すら覚えます。まるで必殺技のような響きがあります。そして実際、論理という武器を使った必殺技なのです。

言葉の持つ力を感じました。たった一言で、場の空気が変わります。相手の表情が変わります。この決め台詞があるからこそ、推理バトルがより引き立つのでしょう。

読み終わった後、日常生活でつい使いたくなってしまいます。もちろん使う場面はなかなかありませんが、心の中で唱えることはあります。

2. 探偵vs探偵の構図が新しい

従来のミステリでは、探偵が一人で謎を解きますよね。でもこの作品は違います。

複数の探偵や推理家が登場し、それぞれが異なる推理を披露します。そしてそれらを主人公の探偵が否定していくという、これまでにない構図です。まるで知恵比べのトーナメント戦を見ているようでした。

この形式のおかげで、一つの事件を多角的に見ることができます。様々な可能性が提示され、それぞれに説得力があるのです。どれが正しいのか、読者も混乱します。でもその混乱こそが、この作品の魅力なのです。

3. ロジックの積み重ねが気持ちいい

論理的な推理の積み重ねが、本当に心地よいです。

一つ一つの可能性を丁寧に検証し、証拠に基づいて否定していく過程は、まるで数学の証明問題を解いているようでした。「∴(ゆえに)」という記号を久々に思い出したという感想もあります。それくらい論理的で、理詰めの展開なのです。

理解できたときの爽快感は格別です。「なるほど、そういうことか」と膝を打つ瞬間が何度もありました。頭を使った分だけ、読後の満足感も大きいのです。

4. キャラクターの個性が際立つ

登場人物がみんな癖が強くて、魅力的です。

特にヤオ・フーリンというキャラクターが好きでした。冷徹で非道な高利貸しなのに、上苙に対してはヤキモキしたりイラついたりする姿が、少しかわいらしいのです。事件が凄惨でグロテスクな分、フーリンの人間らしい一面が心を和ませてくれました。

上苙丞も独特です。奇蹟を信じる探偵という設定自体が矛盾しているようで、でもその矛盾が彼の魅力になっています。なぜ彼が奇蹟を証明しようとするのか、その理由を知ったとき、キャラクターへの理解が深まります。

5. 中国風の雰囲気も魅力のひとつ

中国語や中国風の表現が頻繁に登場します。

最初は少し戸惑いました。でも読み進めるうちに、この独特の雰囲気が作品世界を豊かにしていることに気づきます。中国語をいなしながら読むのは大変でしたが、それもまた読書の楽しみの一つでした。

異国情緒あふれる設定が、事件の不思議さをより際立たせています。日本を舞台にしながらも、どこか別世界のような感覚を覚えるのです。

読書感想文を書くヒント

夏休みの宿題や課題で読書感想文を書く人もいるかもしれません。この本を題材にするなら、どんな切り口があるでしょうか。

1. 「奇蹟を証明する」という発想について書く

この作品の最大の特徴は、奇蹟を証明しようとする探偵です。

普通、探偵は論理で謎を解きます。奇蹟なんて信じません。でも上苙丞は違います。奇蹟を信じているからこそ、それを証明したいのです。この矛盾した姿勢について、自分なりの考えを書いてみるといいでしょう。

「科学と信仰は対立するのか」「論理で証明できないものに価値はあるのか」といったテーマにつなげることもできます。哲学的な深みのある感想文になるはずです。

2. 印象に残った推理バトルについて語る

複数の推理バトルが描かれるので、特に印象に残った場面を選んで書くといいでしょう。

なぜその場面が印象に残ったのか。どの仮説が面白かったのか。上苙の反論で納得できた部分はどこか。具体的なエピソードを引用しながら書けば、説得力のある感想文になります。

自分が探偵だったらどう考えるか、という視点で書くのも面白いかもしれません。

3. 探偵・上苙丞というキャラクターの魅力

キャラクター論として書くのも一つの手です。

上苙丞がなぜ奇蹟にこだわるのか。その背景にある物語を読み解きながら、キャラクターの内面を分析してみましょう。彼の行動原理や価値観について考えることで、作品への理解が深まります。

フーリンとの関係性についても触れるといいでしょう。二人の掛け合いから見えてくる、人間関係の機微を描けば、深みのある感想文になります。

4. この本から学んだこと

読書感想文では、本から学んだことを書くのが定番です。

論理的思考の大切さ、可能性を一つ一つ検証する姿勢、既成概念にとらわれない発想など、この本から学べることはたくさんあります。自分の生活や経験と結びつけて書けば、オリジナリティのある感想文になるでしょう。

「真実とは何か」という根本的な問いについて考えるのもいいかもしれません。

考察:物語に込められた深いテーマ

表面的には推理バトルを楽しむ作品ですが、深く読み込むと様々なテーマが見えてきます。

1. 奇蹟と論理の対立

この作品の根底にあるのは、奇蹟と論理の対立です。

科学的・論理的に説明できないものを、私たちは奇蹟と呼びます。でも本当に奇蹟は存在するのでしょうか。それとも、まだ解明されていない論理があるだけなのでしょうか。上苙はこの問いに、独自の方法で挑んでいます。

彼は奇蹟以外のすべての可能性を否定することで、奇蹟の存在を証明しようとします。これは逆説的なアプローチです。でもだからこそ、論理の限界と可能性の両方を示しているのです。

現代社会では、科学で説明できないものは否定されがちです。でもこの作品は、論理だけでは捉えきれない何かの存在を示唆しています。

2. 「可能性を否定する」ことの意味

推理において、可能性を否定することは重要です。

でも同時に、可能性を否定し続けることの難しさも描かれています。どんな仮説にも、完全に否定しきれない余地が残るのです。読者の中にも「本当にその可能性はないのか」と疑問を持つ人がいるでしょう。

これは現実世界でも同じです。何かを証明するとき、私たちは消去法を使うことがあります。でも本当にすべての可能性を検討できているのか。見落としている可能性はないのか。そんな問いを突きつけられます。

3. 探偵の役割とは何か

この作品は、探偵という職業の本質を問い直しています。

普通、探偵は真相を解明する存在です。でも上苙は違います。彼は奇蹟を証明しようとします。つまり、謎を解くのではなく、謎のままにしておこうとするのです。これは探偵の役割の転覆とも言えます。

では探偵の本当の役割とは何でしょうか。真実を明らかにすることでしょうか。それとも、依頼人の心に平安をもたらすことでしょうか。上苙の姿勢は、そんな問いを投げかけています。

作品のテーマ・メッセージ

井上真偽さんが作品に込めたメッセージを、私なりに読み解いてみます。

1. 論理で証明できないものの価値

この作品は、論理万能主義への疑問を投げかけています。

現代社会では、科学的根拠やエビデンスが重視されます。論理的に説明できないものは、価値がないとみなされがちです。でも本当にそうでしょうか。愛や希望、信仰といった、数値化できないものにも価値があるはずです。

上苙が奇蹟を証明しようとするのは、論理を超えた何かの存在を信じているからです。彼の姿勢は、論理だけでは捉えきれない人間の本質を示しています。この作品を読むと、目に見えないものの大切さを再認識させられます。

2. 信じることと疑うこと

探偵という職業は、疑うことから始まります。でも上苙は信じることから始めます。

彼は奇蹟を信じています。でも同時に、論理も信じています。この二つは矛盾しているようで、実は共存できるのかもしれません。信じることと疑うことは、コインの裏表のような関係なのです。

何かを信じるためには、徹底的に疑う必要があります。疑い抜いた先に、本当に信じられるものが見つかるのです。上苙の姿勢は、そんなメッセージを伝えています。

3. 真実を追い求める姿勢

結局のところ、この作品が描いているのは真実への渇望です。

上苙も、挑戦者たちも、みんな真実を知りたいのです。アプローチは違っても、その根底にある思いは同じです。真実を追い求める姿勢こそが、人間を人間たらしめているのかもしれません。

たとえ真実にたどり着けなくても、追い求め続けることに意味があります。この作品は、そんなメッセージを読者に伝えているように感じました。

本格ミステリの新しい形

井上真偽さんは、本格ミステリというジャンルに新しい風を吹き込みました。

1. 多重解決ミステリという手法

多重解決ミステリという形式自体は、以前からありました。

でもこの作品ほど、その形式を極限まで推し進めた作品は少ないでしょう。次々と提示される仮説、それを否定していく過程。この繰り返しが、読者を飽きさせません。

一つの事件に対して、こんなにも多様な解釈があるのかと驚かされます。そして、どの解釈にも一理あるのです。真実は一つではないかもしれない。そんな可能性を示唆しています。

2. 従来の探偵小説との違い

従来の探偵小説では、探偵が華麗に謎を解いて終わります。

でもこの作品では、謎を解くことが目的ではありません。奇蹟を証明することが目的なのです。この目的の違いが、物語の構造を根本から変えています。

また、探偵が不利な立場に立たされるという設定も斬新です。相手は自由に仮説を立てられるのに、探偵は証拠に基づいて否定しなければならない。この非対称性が、緊張感を生み出しています。

3. 井上真偽が切り開いた道

この作品の成功は、本格ミステリの可能性を広げました。

論理とロジックを徹底的に追求しながらも、エンターテインメントとして面白い。この両立は簡単ではありません。でも井上真偽さんは、それを成し遂げたのです。

後続の作家たちにも影響を与えているでしょう。本格ミステリは、まだまだ進化できる。そんな希望を感じさせてくれる作品です。

続編や関連作品もチェック

「その可能性はすでに考えた」が気に入ったなら、関連作品も読んでみてください。

1. 続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』

上苙丞シリーズの続編です。

前作と同じく、奇蹟を証明しようとする探偵の活躍が描かれます。前作を読んで上苙とフーリンのコンビが気に入ったなら、絶対に読むべきでしょう。二人の関係性がさらに深まっていきます。

前作で提示されたテーマが、さらに深く掘り下げられています。シリーズとして読むことで、作品世界への理解が深まるはずです。

2. デビュー作『恋と禁忌の述語論理』

実は上苙丞が初めて登場するのは、こちらのデビュー作です。

時系列的には、この作品を先に読むのが正しい順番でしょう。上苙の背景や、フーリンとの出会いが描かれています。「その可能性はすでに考えた」を読んで興味を持ったなら、ぜひ読んでみてください。

メフィスト賞受賞作だけあって、デビュー作とは思えない完成度です。

3. ドラマ化された『探偵が早すぎる』

井上真偽さんの代表作の一つです。

こちらはテレビドラマにもなりました。原作とドラマの両方を楽しめます。「その可能性はすでに考えた」とは違うタイプの作品ですが、井上真偽さんらしい論理的な展開は健在です。

幅広い作品に触れることで、この作家の魅力をより深く理解できるはずです。

なぜこの本を読んだ方が良いのか

最後に、なぜこの本を読むべきなのか、力説させてください。

1. 本格ミステリの面白さが凝縮されている

本格ミステリの醍醐味が、この一冊に詰まっています。

論理的な推理、意外な真相、個性的なキャラクター。ミステリに求められる要素が、すべて高いレベルで実現されています。しかも、従来のミステリとは違う新しいアプローチを取っているのです。

本格ミステリが好きな人はもちろん、これから本格ミステリを読んでみたいという人にもおすすめです。この作品を読めば、本格ミステリの魅力を存分に味わえます。

2. 読後に考えることが増える

この本を読むと、様々なことを考えさせられます。

真実とは何か。奇蹟は存在するのか。論理の限界はどこにあるのか。哲学的な問いが、自然と頭に浮かんできます。ただ娯楽として楽しむだけでなく、知的な刺激も得られるのです。

読後、誰かとこの本について語りたくなるはずです。議論のきっかけになる作品です。

3. 新しい読書体験ができる

多重解決ミステリという形式は、新鮮な読書体験を提供してくれます。

一つの事件を、様々な角度から見る。複数の真相が提示される。どれが正しいのか分からなくなる。この混乱と興奮は、他の作品ではなかなか味わえません。読書の新しい楽しみ方を教えてくれる作品です。

マンネリ化した読書生活に刺激が欲しいなら、この本はぴったりです。きっと新しい扉を開いてくれるでしょう。

まとめ

「その可能性はすでに考えた」は、本格ミステリの常識を覆す作品でした。奇蹟を証明しようとする探偵、次々と現れる挑戦者、論理で戦う推理バトル。どれをとっても斬新で、読んでいて飽きることがありません。

この本を読み終わったら、きっと誰かに勧めたくなるはずです。「こんな面白い本があったよ」と。そして一緒に語り合いたくなるはずです。それくらい、人に話したくなる魅力に満ちています。本格ミステリの新しい可能性を切り開いた井上真偽さんの才能に、ただただ脱帽です。

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