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【よむよむかたる】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:朝倉かすみ)

ヨムネコ

本を読むという行為は、本来とても個人的なものです。でも、誰かと一緒に読んで語り合うと、まったく違う景色が見えてくることがあります。朝倉かすみさんの『よむよむかたる』は、そんな「読むこと」と「語ること」の豊かさを描いた小説です。舞台は小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」。ここに集まるのは平均年齢85歳の読書会メンバーたちと、二作目が書けずに悩む28歳の青年です。

老いや死を抱えながらも、本を通じて人生を語り合う彼らの姿は、読むほどに心が温かくなります。第172回直木賞候補にもなったこの作品は、世代を超えた交流と、それぞれの人生が交差する瞬間をやさしく丁寧に描いています。ここでは、物語のあらすじから感想、考察まで、この小説の魅力をたっぷりとお伝えします。

『よむよむかたる』は平均年齢85歳の読書会を描いた心温まる物語

朝倉かすみさんの新作『よむよむかたる』は、小樽を舞台にした読書会の物語です。本を読み、人生を語る。そんなシンプルだけれど豊かな時間が、ページをめくるたびに心に染み込んできます。

どんな内容の小説なのか?

小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」では、月に一度の読書会が開かれています。その名も「坂の途中で本を読む会」。今年で20年目を迎えるこの会は、最年長92歳、最年少78歳という超高齢メンバーで構成されています。

店長を務めるのは、安田松生という28歳の青年です。彼は新人賞を受賞して一冊だけ本を出した小説家でもありますが、それ以降は二作目が書けずにいます。叔母の美智留から店の運営を引き継いだばかりで、読書会の世話係も任されることになりました。最初は戸惑いながらも、老人たちとの交流を通じて、安田の心境に変化が訪れていきます。

物語は安田の視点から描かれ、個性豊かなメンバーたちの日常と、やがて明らかになっていく過去の秘密が絡み合っていきます。読書会というゆるやかな枠組みの中で、人生の深さや温かさが静かに浮かび上がってくる作品です。

なぜ今この本が注目されているのか?

この作品が注目を集めている理由は、まず第172回直木賞の候補作に選ばれたことです。朝倉かすみさんは過去にも数々の文学賞を受賞してきた実力派作家ですが、今回の作品は特に多くの読者の心を掴んでいます。

高齢化が進む現代社会において、この小説が描く老人たちの姿は新鮮です。弱々しくもなく、悲壮感もない。むしろ「フレッシュな老人」として、いきいきと目を輝かせて語り合う彼らの姿があります。年齢を重ねることへの不安や恐れを和らげてくれるような、前向きなメッセージが込められているのです。

また、読書会という題材も魅力的です。本を通じて人と人がつながる様子は、孤独を感じやすい現代において、居場所の大切さを改めて教えてくれます。世代を超えた交流が描かれることで、若い読者にも、年齢を重ねた読者にも、それぞれの立場で共感できる内容になっています。

舞台となる小樽の「喫茶シトロン」とは?

物語の舞台である「喫茶シトロン」は、小樽の古民家を改装したカフェです。坂の途中にあるこの店は、読書会のメンバーたちにとって特別な場所になっています。

店内では、毎月決まった日に老人たちが集まり、課題図書を順番に朗読しながら語り合います。ただ本を読むだけではなく、その内容について自由に意見を交わす。時には人生の経験を重ね合わせながら、深い対話が生まれていくのです。

小樽という土地の持つ郷愁や、古民家カフェの温かい雰囲気が、物語全体を包み込んでいます。作者の朝倉かすみさん自身が小樽出身ということもあり、地元への愛情が随所に感じられる描写になっています。この場所が、登場人物たちにとって「もともとのすがた」で語り合える、かけがえのない居場所なのです。

項目詳細
著者朝倉かすみ
出版社文藝春秋
発売日2024年9月19日
ページ数320ページ
その他第172回直木賞候補作

朝倉かすみはどんな作家なのか?

朝倉かすみさんは、人間の日常や内面を丁寧に描くことで知られる作家です。派手さはないけれど、読むほどに心に残る作品を生み出し続けています。

北海道小樽市出身の受賞歴豊富な作家

朝倉かすみさんは北海道小樽市の生まれです。この土地への愛着は深く、『よむよむかたる』でも故郷を舞台に選んでいます。小樽の坂道や海、古い建物の風景が、物語の中に自然と溶け込んでいるのです。

作家としてのキャリアは長く、これまでに数々の文学賞を受賞してきました。その作風は、日常の中にある小さな感情の揺れや、人と人との関係性を繊細に描くことに特徴があります。大きな事件が起こるわけではなくても、読後にはじんわりと心が温まる。そんな作品を書き続けています。

今回の『よむよむかたる』では、「18年間の編集者人生の中で一番泣いた作品」と担当編集者が語るほど、心を動かす物語になっています。朝倉さん自身の経験や思いが、深く反映されているのでしょう。

代表作品と作風の特徴

朝倉かすみさんの代表作としては、『平場の月』が挙げられます。50代の男女の恋愛を描いたこの作品は、多くの読者に支持され、映画化もされました。年齢を重ねた人たちの恋愛を、美化せず、でも優しく描く姿勢が印象的です。

他にも、日常の中の小さな物語を丁寧に紡ぐ作品が多くあります。特別な才能があるわけでもない、ごく普通の人たちが主人公です。でもその「普通」の中にこそ、生きることの豊かさや切なさがあることを、朝倉さんは教えてくれます。

文体は平易で読みやすく、それでいて心に残る言葉が散りばめられています。派手な表現や難しい言葉を使わなくても、人の心を動かすことができる。それが朝倉かすみさんの強みです。ユーモアのセンスもあり、クスッと笑える場面も多いのが魅力といえるでしょう。

『平場の月』から『よむよむかたる』まで

『平場の月』では50代の恋愛を描いた朝倉さんですが、『よむよむかたる』では更に年齢層を上げて、80代、90代の人たちの物語に挑戦しています。でも決して老いを悲観的に描いているわけではありません。

むしろ、年齢を重ねたからこその自由さや、人生を語る言葉の重みが感じられます。若い主人公の安田との対比も効いていて、世代を超えた理解や共感が丁寧に描かれているのです。

作品を重ねるごとに、朝倉さんの視野は広がり続けています。年齢や性別、立場の違う人たちを、それぞれに愛情を持って描く。その姿勢が、読者に安心感を与えてくれるのかもしれません。『よむよむかたる』は、朝倉かすみという作家の到達点の一つといえる作品です。

こんな人におすすめの一冊です

『よむよむかたる』は、読書が好きな人はもちろん、人生の後半をどう生きるか考えている人にも響く小説です。心温まる物語を求めている方にぴったりの一冊といえるでしょう。

本や読書会が好きな人

この小説の中心にあるのは、やはり「本を読む」という行為です。課題図書について語り合うシーンは、本好きな人にはたまらないはずです。登場人物たちが本を通じて自分の人生を振り返ったり、新しい視点を得たりする様子は、読書の持つ力を改めて感じさせてくれます。

実際に読書会に参加している人なら、共感する場面が多いでしょう。同じ本を読んでも、人によって感じ方が違う。その違いこそが面白い。そんな読書会の醍醐味が描かれています。

もし読書会に参加したことがない人でも、この小説を読めば興味が湧いてくるかもしれません。一人で読むのとは違う、誰かと語り合う楽しさが伝わってくるからです。本を読むことがもっと好きになる、そんな作品です。

人生の後半を前向きに生きたい人

老いや死というテーマは、誰もがいつかは向き合わなければならないものです。でもこの小説に登場する老人たちは、それらを恐れていません。むしろ、残された時間を大切に、自分らしく生きようとしています。

平均年齢85歳の読書会が20年も続いているということ自体が奇跡的です。毎月集まれることが当たり前ではない。だからこそ、一回一回の集まりが貴重なのです。そんな時間の使い方を見ていると、今この瞬間を大切にしようという気持ちになります。

年齢を重ねることへの不安は誰にでもあるでしょう。でもこの小説を読むと、老いることも悪くないと思えてきます。経験を積んだからこその豊かさや、人生を語る言葉の重みがあるのです。前向きに歳を重ねたい人に、ぜひ読んでほしい作品です。

穏やかで心温まる物語を求めている人

『よむよむかたる』には、大きな事件や劇的な展開はありません。読書会の日常が淡々と描かれ、登場人物たちの関係がゆっくりと深まっていきます。そのゆったりとしたペースが、心地よいのです。

忙しい日常から少し離れて、静かな時間を過ごしたい。そんな気分のときにぴったりの小説です。読んでいるだけで、まるで自分も読書会に参加しているような気持ちになれます。

ただし、途中からミステリ要素も加わってきます。安田が小説を書けなくなった理由や、突然現れる若い女性の正体など、謎が少しずつ明らかになっていくのです。穏やかなだけではなく、物語としてのドキドキ感もある。そのバランスが絶妙な作品といえるでしょう。

あらすじ:老人たちの読書会が紡ぐ人生の物語(ネタバレあり)

ここからは、物語の具体的な内容に触れていきます。ネタバレを含みますので、まっさらな状態で読みたい方は飛ばしてください。

最年長92歳、最年少78歳の読書会メンバーたち

「坂の途中で本を読む会」のメンバーは、それぞれに個性的です。会長は糖尿病を患っていて、毎朝娘のユリからインスリン注射を受けています。読書会でのおやつ食べ放題が問題になる場面もあり、リアルな高齢者の姿が描かれています。

蝶ネクタイ、マンマ、シルバニア、まちゃえ、しんちゃん。それぞれにニックネームがあり、キャラクターが立っています。特に蝶ネクタイは、方言の解説のタイミングが絶妙で、読者のお気に入りキャラクターになっているようです。

彼らは持病の一つや二つは当たり前で、毎月無事に集まれること自体が奇跡的な状況です。でもだからこそ、一回一回の読書会を大切にしています。本を読み、語り合う。その時間が、彼らにとってかけがえのないものなのです。

やさぐれた青年・店長の視点から描かれる日常

物語の語り手は、喫茶シトロンの店長である安田松生です。28歳の彼は、新人賞を受賞して一冊だけ小説を出版しましたが、それ以降は二作目が書けずにいます。作家としての鬱屈を抱えながら、叔母から店を引き継ぎました。

最初、安田は読書会に対して斜に構えていました。世話係だけをするつもりで、積極的に関わるつもりはなかったのです。でも「小説家」であることを見込まれて、会の一員にならざるを得なくなります。

そんなやさぐれた安田のツッコミが、物語に軽妙さを加えています。老人たちの自由奔放な発言に、心の中で突っ込みを入れながらも、次第に彼らの魅力に引き込まれていく。その変化が、読者にとっても心地よいのです。安田の目を通して見る読書会は、最初は奇妙に映りますが、やがて温かく、かけがえのないものに変わっていきます。

謎の若い女性・井上紋の登場で変わる物語

物語の中盤で、井上紋という若い女性が読書会に加わります。彼女は会うたびに自虐的な発言をするのですが、嫌な感じはしません。むしろ気になる存在として描かれています。

井上紋の登場によって、物語は一気に動き出します。彼女と安田との関わりが深まるにつれて、読書会の創設時の秘密や、メンバーたちとの濃密な関係が次々と明らかになっていくのです。

表紙の女の子は誰なのか。読者が抱くこの疑問が、物語の中で大きな意味を持ってきます。井上紋という存在が、安田の過去と現在をつなぐ鍵になっているのです。彼女の正体が分かったとき、読者は「そうだったのか」と納得するでしょう。

主人公・安田が抱える秘密と過去

安田が二作目を書けなくなった理由には、深い過去があります。物語が進むにつれて、断片的な記憶が甦ってくるのです。喫茶シトロンで女の子に本を読んであげる場面。ルビがないから、でっち上げの話をしていた記憶。

その女の子とは誰だったのか。なぜ安田は小説を書けなくなったのか。これらの謎が、読書会のメンバーたちと深く結びついていることが明らかになります。誰も予想できない展開で、読者を驚かせてくれるのです。

この謎解きの部分がミステリ要素として機能していて、穏やかな日常の描写とのコントラストが効いています。最後には安田の小説家としての再起動を暗示させる結末が待っていて、希望を感じさせてくれます。

読書会が照らし出すそれぞれの人生

読書会というのは、本について語る場所であると同時に、人生について語る場所でもあります。老人たちは本を通じて、自分の経験や感情を語ります。そこには、母親としての役割や、誰かの妻としての立場を超えた、「生のままの姿」があるのです。

会長の娘・ユリが語るように、読書会での母はいつもと違って見えます。「たいそうフレッシュな老人」として、いきいきと目を輝かせ、みずみずしく笑っている。それは、自分らしくいられる場所だからこそ生まれる表情なのでしょう。

安田もまた、読書会に参加し、老人たちと「語る」ことで心境に変化が訪れます。最初は義務感だけだったのが、次第に自分も本当に参加したいと思うようになる。人と人が本を通じてつながることの豊かさを、この物語は静かに、でも確実に伝えてくれます。

本を読んだ感想:言葉が溢れだす幸福な時間

『よむよむかたる』を読み終えたとき、心の中に温かいものが残ります。それは、人と人がつながる瞬間の美しさを目撃したからかもしれません。

個性豊かなキャラクターたちの魅力

この小説の一番の魅力は、やはり登場人物たちです。特に読書会のメンバーは、一人一人がしっかりと描き分けられています。蝶ネクタイ、マンマ、シルバニア。ニックネームからして個性的ですが、それぞれに人生があり、物語があります。

年齢を重ねた人たちだからこその自由さがあります。もう失うものは少ない。だからこそ、言いたいことを言い、やりたいことをやる。その姿が清々しいのです。若い安田が彼らに振り回されながらも、次第に惹かれていく気持ちがよく分かります。

特に印象的なのは、老人たちが「死」について語る場面です。避けるのではなく、向き合う。それができるのは、長く生きてきたからこその強さなのでしょう。彼らの言葉には、説得力があります。読んでいるうちに、読者自身も死について考えさせられるかもしれません。

老いや死と向き合う穏やかな描写

高齢者を主人公にした小説は、ともすれば悲壮感が漂いがちです。でも『よむよむかたる』は違います。確かに会長は糖尿病で入院したり、持病を抱えているメンバーもいます。でもそれらは、日常の一部として淡々と描かれています。

老いることも、病気になることも、やがて死ぬことも、全てが人生の一部です。それを否定せず、でも悲観もせず、ありのままに受け止める。そんな姿勢が、この小説全体を貫いています。

だからこそ、読後感が穏やかなのでしょう。大きなアップダウンはありませんが、その穏やかさが心地よい。まるで静かな音楽を聴いているような、そんな読書体験ができます。年齢を重ねることへの不安が、少しだけ和らぐかもしれません。

読書という行為が持つ力

この小説を読んでいると、改めて読書の力を感じます。本を読むことで、自分とは違う人生を疑似体験できる。自分の経験と重ね合わせて、新しい発見をする。そんな読書の醍醐味が、作中で何度も語られています。

読書会では、課題図書を順番に朗読します。ただ黙読するのとは違い、声に出して読むことで、言葉が体を通っていきます。そして誰かの朗読を聞くことで、その人の人生が透けて見えてくる。そんな豊かな時間が描かれているのです。

「本を読み、人生を語る。人が生のままの姿になり言葉が溢れだす」。この小説のキャッチコピーは、まさに作品の本質を表しています。読書は孤独な行為だと思われがちですが、実は人とつながるための素晴らしい手段でもあるのです。

ミステリ要素が絡む意外な展開

穏やかな日常を描いた小説かと思いきや、途中からミステリ要素が加わってきます。安田が小説を書けなくなった理由や、井上紋という女性の正体。これらの謎が、読者の興味を引きつけます。

謎解きの部分は、決して派手ではありません。でも丁寧に伏線が張られていて、最後に全てがつながったときの気持ちよさがあります。誰も予想できない展開だったという感想も多く、読者を驚かせることに成功しています。

穏やかなだけではない、物語としての面白さもある。ミステリとしても、人間ドラマとしても楽しめる。そのバランスの良さが、この小説の完成度の高さを示しているといえるでしょう。

読書感想文を書くときのポイント

もし『よむよむかたる』で読書感想文を書くなら、いくつかのアプローチがあります。自分が一番心を動かされた部分に焦点を当てるのが良いでしょう。

印象に残った読書会のシーンを選ぶ

作中には、いくつもの読書会のシーンが描かれています。その中で、特に印象に残った場面を選んで、なぜそこに心を動かされたのかを掘り下げてみましょう。

課題図書について語り合うシーンでは、登場人物たちの人生観が表れています。同じ本を読んでも、人によって感じ方が違う。その違いの理由を考えることで、より深い感想が書けるはずです。

例えば、老人たちが死について語る場面を取り上げて、自分は死についてどう考えるか。あるいは、安田が読書会に参加して変わっていく様子から、人とのつながりの大切さについて考える。そんなふうに、物語から自分の考えへとつなげていくのが良いでしょう。

登場人物の中で共感した人物について書く

『よむよむかたる』には、年齢も性格も様々な登場人物が出てきます。その中で、特に共感した人物を選んで、その理由を書くのも一つの方法です。

28歳の安田に共感する人もいれば、80代、90代の読書会メンバーに惹かれる人もいるでしょう。あるいは、途中から登場する井上紋という女性に興味を持つかもしれません。

その人物のどこに共感したのか。どんな言動が印象的だったのか。具体的なエピソードを挙げながら書いていくと、説得力のある感想文になります。そして、その人物から学んだことや、自分の生き方に活かせそうなことを考えてみるのも良いでしょう。

自分にとって「居場所」とは何かを考える

この小説の大きなテーマの一つは、「居場所」です。喫茶シトロンの読書会は、メンバーたちにとってかけがえのない居場所になっています。そこでは、役割を超えた「生のままの姿」でいられるのです。

自分にとっての居場所はどこか。家族や学校、職場とは違う、自分らしくいられる場所はあるか。そんなことを考えてみるのも面白いでしょう。

もし今そういう場所がないなら、どんな居場所がほしいか。読書会のような集まりに参加してみたいと思うか。この小説を読んで、居場所について考えたことを書くだけで、深みのある感想文になるはずです。

物語に込められたテーマを考える

『よむよむかたる』には、いくつもの層が重なっています。表面的には読書会の物語ですが、その奥には深いテーマが隠されているのです。

「読む」ことと「語る」ことの意味

タイトルの「よむよむかたる」が示すように、この小説の中心にあるのは「読むこと」と「語ること」です。二つの行為は、実は密接につながっています。

読むことで得た感動や発見を、誰かに語りたくなる。そして語ることで、自分の中で理解が深まる。読書会という場は、その循環を生み出す場所なのです。一人で読むだけでは完結しない、語り合うことで初めて開かれる世界があります。

また、「語る」対象は本の内容だけではありません。本をきっかけに、自分の人生について語る。そこに読書会の本当の価値があるのかもしれません。老人たちが本を通じて人生を振り返り、若い安田がそれを聞くことで学んでいく。世代を超えた対話の豊かさが、この小説の核心部分です。

年齢を重ねることの豊かさ

この小説を読むと、年齢を重ねることは決して悪いことではないと思えてきます。むしろ、長く生きてきたからこその豊かさがあるのです。

読書会のメンバーたちは、それぞれに人生の経験を積んできました。喜びも悲しみも、成功も失敗も、全てを抱えて今がある。その重みが、彼らの言葉に深みを与えています。

若い安田が老人たちから学ぶように、読者もまた、この小説から多くのことを学べるでしょう。年齢を重ねることへの不安は誰にでもあります。でも、老いることで失うものばかりではない。むしろ得られるものもある。そんなメッセージが、静かに伝わってくる作品です。

人と人がつながる場所の大切さ

現代社会は便利になった反面、人と人のつながりが薄れているともいわれます。特に高齢者の孤独は、大きな社会問題になっています。

そんな中で、読書会という「集まり」の存在は重要です。月に一度でも、決まった日に決まった場所で会える人がいる。それだけで、生きる張り合いになるのです。

喫茶シトロンは、単なる店ではありません。人と人がつながる場所であり、自分らしくいられる居場所です。こうした場所を持つことの大切さを、この小説は教えてくれます。家族や仕事とは違う、第三の場所。そこがあることで、人生は豊かになるのかもしれません。

作品から広がる関連テーマ

『よむよむかたる』を読むと、様々なテーマが頭に浮かんできます。物語の世界から、現実の社会問題へとつながっていくのです。

現代社会における孤独と居場所づくり

孤独は、現代社会の大きな問題です。特に高齢者の孤独は深刻で、誰とも話さずに一日が終わるという人も少なくありません。

読書会のようなコミュニティは、そんな孤独を和らげる一つの方法です。共通の趣味や興味を持つ人たちが集まる場所があれば、自然と会話が生まれます。義務ではなく、楽しみとして集まれる場所が大切なのです。

もちろん、読書会でなくても構いません。趣味のサークルでも、ボランティアでも、何でも良いのです。大切なのは、自分らしくいられる居場所を持つこと。この小説は、そうした場所の価値を改めて教えてくれます。若い世代にとっても、同じことがいえるでしょう。

読書会という文化の広がり

近年、読書会は静かなブームになっています。本屋やカフェで開催されることも多く、参加する人が増えているのです。

読書会の良いところは、気軽に参加できることです。難しいルールはなく、ただ本を読んで語り合うだけ。それでいて、深いつながりが生まれることもあります。

『よむよむかたる』を読んで、読書会に興味を持った人もいるでしょう。実際に参加してみると、一人で読むのとは違う楽しさが発見できるはずです。本を通じて人とつながる。そんな体験は、人生を豊かにしてくれるかもしれません。

地方都市・小樽の魅力と物語性

小樽という土地の持つ雰囲気が、この物語に深みを与えています。坂の多い街並み、古い建物、海の匂い。そんな小樽の風景が、物語の中に自然と溶け込んでいるのです。

地方都市には、大都市とは違う時間の流れがあります。ゆったりとした空気の中で、人と人の距離が近い。そんな環境だからこそ、読書会のようなコミュニティが根付くのかもしれません。

朝倉かすみさんが故郷の小樽を舞台に選んだことには、深い意味があるのでしょう。土地への愛着が、作品全体を温かく包み込んでいます。読者も小樽に行ってみたくなる。そんな魅力が、この小説にはあります。

なぜこの本を読むべきなのか?

『よむよむかたる』を読む価値は、単なる娯楽を超えています。この本は、人生について考えるきっかけをくれるのです。

本を通じて人生を見つめ直せる

読書会のメンバーたちは、本を読みながら自分の人生を振り返ります。物語の中の出来事と、自分の経験を重ね合わせる。そうすることで、新しい発見があるのです。

読者もまた、この小説を読みながら自分の人生を考えることになるでしょう。今まで当たり前だと思っていたことが、実は特別なことだったと気づくかもしれません。あるいは、今後の人生をどう生きたいか、考えるきっかけになるかもしれません。

本を読むことは、自分と向き合うことでもあります。『よむよむかたる』は、そんな読書の本質を思い出させてくれる作品です。忙しい日常の中で、少し立ち止まって自分を見つめ直す。そんな時間を持つことの大切さを教えてくれます。

年齢を重ねることへの不安が和らぐ

誰でも年を取ります。それは避けられない事実です。でも年を取ることを、多くの人が恐れています。体が衰え、できないことが増えていく。そんな不安があるからでしょう。

でもこの小説を読むと、年齢を重ねることも悪くないと思えてきます。確かに体は衰えるかもしれません。でも、長く生きてきたからこその知恵や、人生を語る言葉の重みがあります。

読書会のメンバーたちは、いきいきと目を輝かせています。年齢に関係なく、人生を楽しんでいるのです。そんな姿を見ていると、自分もそうありたいと思えてきます。この本は、年齢を重ねることへの不安を和らげてくれるでしょう。

誰かと語り合う時間の尊さに気づける

現代社会では、効率が重視されます。短い時間でいかに多くのことをこなすか。そんな価値観が当たり前になっています。

でも『よむよむかたる』が描くのは、まったく逆の時間です。月に一度、ゆっくりと本を読み、語り合う。何かを生産するわけでもなく、ただその時間を楽しむ。そんな非効率的な時間こそが、実は一番大切なのかもしれません。

誰かと語り合うことの尊さ。それは、この小説の核心部分です。効率や生産性とは無縁の、でも人間にとって本当に必要な時間がある。この本を読むと、そんなことに気づかされます。忙しい毎日の中で、少しだけでも誰かとゆっくり語り合う時間を持ちたくなるでしょう。

まとめ

『よむよむかたる』は、読み終えた後も心の中に残り続ける小説です。ページを閉じてからも、登場人物たちの言葉が頭の中で響いているような感覚があります。それは、この物語が単なるフィクションではなく、私たちの人生そのものを映し出しているからかもしれません。

本を読むこと、誰かと語り合うこと、居場所を持つこと。当たり前のようでいて、実はとても大切なことばかりです。朝倉かすみさんは、そんな日常の中にある豊かさを、やさしく丁寧に描き出しています。読書が好きな人にも、これから読書会に参加してみたい人にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

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