【家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:岸田奈美)
「家族だから大切にしなきゃいけない」という言葉に、息苦しさを感じたことはありませんか?
岸田奈美さんの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は、そんな”当たり前”を優しく問い直してくれる一冊です。父を亡くし、車椅子ユーザーの母とダウン症の弟と暮らす日々を、驚くほど明るい筆致で綴ったエッセイは、笑って泣けて、読み終わる頃には心がふわりと軽くなります。この本は2020年に小学館から発売されると大きな反響を呼び、NHKでドラマ化もされました。ここでは、作品のあらすじから感想、読書感想文のヒントまで丁寧にお届けします。
この本はどんな作品?なぜ多くの人に読まれているのか
岸田奈美さんが自身の家族について書いたエッセイ集です。重たくなりそうなテーマを、笑いと温かさで包み込んだ文章が多くの読者の心をつかみました。
1. 笑いと涙が詰まった家族のエッセイ
この本には、岸田さんがnoteに投稿していた家族にまつわる17のエピソードが収録されています。父の死、母の事故、弟との日常――どれも簡単には語れないはずの出来事なのに、岸田さんの文章はどこまでも軽やかです。
悲しみをそのまま悲しみとして書かない。その代わりに、日常の中にある小さな笑いや温もりを丁寧にすくい取っていきます。読んでいると、「こんな風に生きていいんだ」という安心感が胸に広がっていくのです。
辛い現実を面白おかしく表現する力は、岸田さんならではのものです。ネガティブを感じさせないパワーがページ全体からあふれ出ています。だからこそ、多くの人がこの本に救われたのでしょう。
2. NHKでドラマ化もされた話題作
2023年、NHKのプレミアムドラマ枠でこの本がドラマ化されました。ドラマでは、原作にはない”if(もしも)の物語”が描かれています。
岸田さん自身が脚本を読んで泣いたというこのドラマ。現実の岸田さんが選べなかった道を、ドラマの中の主人公・七実が歩んでいきます。友達と喧嘩したり、思いやり合ったりしながら高校生活を送る姿は、当時の岸田さんが叶えられなかった”隣の人生”でした。
原作とドラマ、両方に触れることで物語の奥行きがより深く感じられます。それぞれ違う角度から岸田家の日々を見つめることができるのです。
3. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 岸田奈美 |
| 出版社 | 小学館 |
| 発売日 | 2020年9月23日 |
| ジャンル | エッセイ |
著者・岸田奈美さんはどんな人?
文筆家として活躍する岸田奈美さん。その人柄と経歴を知ると、この本の魅力がさらに深く理解できます。
1. 若き文筆家として注目を集める存在
岸田奈美さんは1991年生まれの文筆家です。大学在学中から株式会社ミライロで働き始め、10年間勤務しました。その傍らで文章を書き続け、noteでの発信が大きな反響を呼びました。
彼女の文章の特徴は、どこまでも正直であることです。飾らない言葉で自分の感情を表現し、読者との距離を縮めていきます。SNSでも積極的に発信を続け、多くのフォロワーから支持されています。
文章を書くことで、自分自身とも向き合ってきた岸田さん。その誠実さが、読者の心を動かす原動力になっているのでしょう。
2. 他にはどんな作品を書いているのか
岸田さんは本作以外にも、いくつかの著書を発表しています。家族のことだけでなく、自分自身の働き方や生き方についても率直に語ってきました。
どの作品にも共通しているのは、読者に寄り添う温かさです。上から目線で語るのではなく、同じ目線に立って一緒に考えてくれます。だからこそ、読んでいて心地よいのです。
文章を通じて、「こんな生き方もあるよ」と静かに示してくれる。それが岸田さんの作品の魅力だと感じます。
3. 発信力が認められた経歴
大学時代から働き始めたミライロという会社は、バリアフリーに関する事業を展開する企業です。そこで10年間、社会人として経験を積んできました。
ただ、会社の規模が大きくなるにつれて、社会人としての自信を失うこともあったそうです。それでも文章を書き続け、自分の居場所を見つけていきました。
働きながら書くという生活の中で、岸田さんは多くのことを感じ取ってきたのでしょう。その経験が、作品に深みを与えているのだと思います。
こんな人におすすめしたい
どんな人がこの本を手に取るべきか、具体的にお伝えします。きっとあなたにも当てはまる項目があるはずです。
1. 家族との向き合い方に悩んでいる人
「家族だから愛さなきゃいけない」という呪縛に苦しんでいる人に、ぜひ読んでほしい一冊です。岸田さんは作品の中で、家族は選べるものだと語ります。
血が繋がっているからといって、無条件に大切にしなければいけないわけではありません。むしろ、自分が幸せになれる関係を選んでいいのです。この考え方は、家族関係に悩む多くの人を救ってくれるでしょう。
家族との距離感に正解はありません。この本を読めば、自分なりの答えを見つけるヒントが得られるかもしれません。
2. 明るい文章で心を癒されたい人
辛い現実を抱えているけれど、重い本は読みたくない。そんな人にこそおすすめです。岸田さんの文章は、どんなに深刻な話題でも軽やかに読ませてくれます。
笑って泣けるエッセイは、読後に不思議な爽やかさを残します。ページをめくるたびに、「明日も生きていこう」という気持ちが湧いてくるのです。
心が疲れているときこそ、この本を開いてみてください。岸田さんの言葉が、優しく背中を押してくれるはずです。
3. ノンフィクションが好きな人
作り話ではない、リアルな人生の物語に心を動かされる人にぴったりです。岸田さんのエッセイは、飾らない言葉で綴られた真実の記録です。
ノンフィクションならではの説得力と、それでいて読みやすい文体。この絶妙なバランスが、読者を物語の中に引き込んでいきます。
実際に起きたことだからこそ、胸に深く響くのでしょう。人生の豊かさを再確認させてくれる作品です。
あらすじ:岸田家の日々を描いたストーリー(ネタバレあり)
ここからは、作品の中心となるエピソードを紹介していきます。ネタバレを含みますので、先に本を読みたい方は飛ばしてください。
1. 父を亡くし、母が車椅子ユーザーになった日
岸田さんが高校2年生のとき、父が突然亡くなりました。その悲しみが癒えない中、母が交通事故に遭い、車椅子での生活を余儀なくされます。
想像を絶する出来事が続いた日々。普通なら心が折れてしまいそうな状況です。けれど岸田さんは、その現実を受け止めながら前を向いていきました。
父の死も母の事故も、決して乗り越えられるものではありません。それでも、その中で生きていく方法を見つけていく。その過程が、この本には丁寧に描かれています。
2. ダウン症の弟・良太との姉弟関係
弟の良太さんはダウン症です。小学生の頃、良太さんが岸田さんの学校に入学したとき、先生が「弟さんが障害者で大変なので、みんな助けてあげましょう」と言いました。
岸田さんはそれを聞いて、悔しくて泣いたそうです。「障害者家族だから大変」と決めつけられることが嫌だったのです。
良太さんとの関係は、単純な”介護する姉と介護される弟”ではありません。お互いを思いやり、時にはぶつかり合いながら、対等な人間として向き合ってきました。その姿勢こそが、この本の核心なのかもしれません。
3. 東京ディズニーランドでの家族の思い出
家族でディズニーランドに行ったエピソードも印象的です。車椅子の母と一緒に回るパークは、きっと大変なこともあったでしょう。
それでも、その時間は家族にとってかけがえのないものでした。笑い合い、楽しみ、一緒に過ごす。そんな当たり前の幸せを、岸田家は大切にしてきたのです。
特別なことをしなくても、一緒にいるだけで幸せ。この本を読むと、そんなシンプルな真理に気づかされます。
4. 写真家・幡野広志さんとの出会い
この本のタイトルは、写真家の幡野広志さんの言葉から生まれました。幡野さんとの対話を通じて、岸田さんは「家族は選べる」という考え方に出会います。
血の繋がりではなく、愛する気持ちで家族を選ぶ。この発想は、岸田さんにとって大きな転機になりました。自分が母や弟と過ごしてきたのは、”家族だから”ではなく”愛しているから”だったのです。
この気づきが、作品全体を貫くメッセージになっています。読者にとっても、家族観を見つめ直すきっかけになるでしょう。
5. 母に訴えた幼い日の寂しさ
退院後、母が「死にたい」と口にした日がありました。高校生の岸田さんは、複雑な感情の中で必死に考えます。
そして出てきた言葉が「死んでもいいよ」でした。それに続けて、「ママが、生きててよかったって思えるように、なんとかするから」と伝えたのです。
この言葉が本当に正しかったのか、岸田さん自身も分からないと語ります。ただ、この瞬間が岸田家にとって大きな転換点になったことは確かです。完璧な答えなんてない中で、必死に言葉を紡いだ。その姿に、多くの読者が胸を打たれるのです。
この本を読んで感じたこと
実際に読んでみて、心に残ったポイントをお伝えします。きっとあなたも同じような感想を持つのではないでしょうか。
1. 悲しみをユーモアで包む文章の温かさ
岸田さんの文章は、どこまでも優しいのです。辛い出来事を辛いままに書かず、ユーモアを交えて語ります。
これは父親の影響かもしれないと岸田さん自身が語っています。亡くなった父は面白い人で、母が将来を悲観して暗くなると、「俺と良太は将来、二人で米を作って暮らす」と明るく言っていたそうです。
この文体は、読者への思いやりでもあります。重たい現実を読者に押し付けるのではなく、一緒に笑いながら受け止めていく。そんな姿勢が、文章の端々から感じられるのです。
読んでいて心が軽くなるのは、岸田さんの優しさが言葉に宿っているからでしょう。
2. 家族を愛するという選択
「家族だから愛して当然」という考え方を、この本は否定します。家族であっても、愛するかどうかは選べるのです。
岸田さんは母や弟と過ごすことを選びました。それは義務感からではなく、一緒にいると自分も幸せになれるからです。この視点の転換が、どれほど多くの人を救ったことでしょう。
家族関係に苦しむ人にとって、「選んでいい」という言葉は希望になります。血の繋がりに縛られる必要はない。自分が心地よいと感じる関係を築いていけばいいのです。
3. 日常の中にある幸せの見つけ方
特別なことをしなくても、日常には幸せが転がっています。岸田さんはそれを見逃さず、丁寧にすくい取っていきます。
弟との旅行、母との会話、何気ない食卓の風景。そうした小さな瞬間こそが、人生を豊かにしてくれるのです。読んでいると、自分の日常も愛おしく感じられてきます。
幸せは遠くにあるのではなく、すぐそばにある。この本は、そんな当たり前のことを思い出させてくれるのです。
4. 読者の心に響くリアルな言葉
作り込まれた美しい言葉ではなく、飾らない正直な言葉だからこそ響きます。岸田さんは自分の弱さも迷いも、そのまま書いています。
「本当にあのやり方が正しかったのか分からない」という率直さが、かえって信頼を生むのです。完璧な答えを持っていないからこそ、読者は共感できます。
人生に正解はありません。だからこそ、岸田さんの迷いながら進む姿が、多くの人の背中を押してくれるのでしょう。
読書感想文を書くときのヒント
学校の課題などで感想文を書く際に役立つポイントをまとめました。自分なりの視点を大切にしてください。
1. 印象に残ったエピソードを選ぶ
17のエピソードの中から、最も心に残った話を一つ選びましょう。「死んでもいいよ」と母に言った話、弟との旅行の話、ディズニーランドのエピソードなど、選択肢はたくさんあります。
なぜそのエピソードが印象に残ったのか、自分の言葉で説明してみてください。そこに、あなただけの感想が生まれます。他の人と同じ場面を選んでも、感じ方は人それぞれ違うはずです。
自分の心が動いた瞬間を大切にすることが、良い感想文を書く第一歩です。
2. 自分の家族と比べてみる
岸田家と自分の家族を比べてみると、新しい発見があるかもしれません。同じところ、違うところを探してみましょう。
「うちの家族もこんな感じだな」と共感する部分もあれば、「うちとは全然違う」と思う部分もあるでしょう。その違いこそが、あなたの視点です。
比較することで、自分の家族についても考えが深まります。それを感想文に盛り込めば、オリジナリティのある内容になるはずです。
3. 著者の言葉で心が動いた部分を引用する
印象的な一文を引用して、それについて自分の考えを書くのも効果的です。「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」というタイトルそのものも、深く考えるきっかけになります。
なぜその言葉に惹かれたのか、自分なりに分析してみましょう。そこから、家族についての自分の価値観が見えてくるはずです。
引用を軸に展開することで、感想文に説得力が生まれます。
物語から読み取れるテーマ
この作品が伝えようとしているメッセージを、いくつかの角度から考えてみます。
1. 血縁だけが家族ではない
岸田さんが幡野さんから教わった「家族は選べる」という考え方が、作品全体を貫いています。血が繋がっているから家族なのではなく、愛する気持ちがあるから家族なのです。
弟の良太さんは今、グループホームで新しい家族を作っています。岸田さん自身も、将来新しい家族を持つかもしれません。家族の形は一つではなく、それぞれが自由に選んでいいのです。
この考え方は、家族に対する固定観念を解放してくれます。誰もが自分に居心地の良い家族を選べる社会であってほしい、という岸田さんの願いが込められているのです。
2. 愛情表現の大切さ
「死んでもいいよ」という言葉も、「なんとかするから」という約束も、すべて愛情表現です。言葉にしなければ、気持ちは伝わりません。
岸田さんは、とっさに口にした一言から最悪の事態に希望の光が差してくることがよくあると語ります。言葉にすることで、自分も覚悟が決まるのかもしれません。
家族だからこそ、素直に気持ちを伝えることが大切です。この本を読むと、そんな当たり前のことに改めて気づかされます。
3. 障害のある家族とともに生きるということ
岸田さんは「家族を愛する作家」と紹介されることが多いそうですが、分かりやすい美談でくくってほしくないと語っています。障害者家族だから大変、弟の面倒を見てえらい、と決めつけられるのが嫌だったのです。
家族と一緒にいるのは、簡単なことではありません。濃い関係を”呪い”として受け取る人もいます。この本は、そうした現実も含めて語っています。
綺麗事では済まない日々の中で、それでも選び取っていく愛の形。それこそが、この作品の真のテーマなのでしょう。
この本が教えてくれること
読み終えたとき、きっとあなたの中に何かが残るはずです。それは人生を前向きに生きるヒントかもしれません。
1. 絶望の中でも笑うことはできる
どんなに辛い状況でも、笑いを見つけることはできます。岸田さんの文章がそれを証明しています。
悲しみと笑いは、実は隣り合わせなのかもしれません。泣きながら笑ったり、笑いながら泣いたりする。そんな複雑な感情こそが、人間らしさなのでしょう。
この本を読むと、ユーモアの持つ力を信じたくなります。辛いときこそ、笑ってみる。その勇気が、明日への一歩になるのです。
2. 家族の形は一つじゃない
世間が想像する”普通の家族”に当てはまらなくても、それで良いのです。岸田家の形は岸田家だけのもので、あなたの家族の形はあなただけのものです。
比べる必要も、合わせる必要もありません。大切なのは、その関係の中で自分が幸せかどうかです。家族のあり方に正解はないと、この本は優しく教えてくれます。
自分らしい家族の形を見つけていい。そう思えることが、どれほど心を軽くしてくれるでしょうか。
3. 人を大切にできるのは大切にされた人だけ
岸田さんが母や弟を大切にできるのは、自分もまた大切にされてきたからなのでしょう。愛情は循環していくものです。
誰かから受け取った優しさを、また誰かに渡していく。そうして繋がっていく温かさが、この本には溢れています。読んでいると、自分も誰かに優しくしたくなるのです。
愛することは、まず愛されることから始まるのかもしれません。
4. 遠慮よりも素直に生きることの価値
岸田さんは、弱みを見せたくないという虚勢を張っていた時期があったと語ります。でも今は、素直に自分の気持ちを表現しています。
遠慮や我慢は、時に関係を遠ざけてしまいます。素直になることで、初めて本当の繋がりが生まれるのかもしれません。
この本を読むと、もっと正直に生きていいんだと思えます。それが、人生を豊かにする秘訣なのでしょう。
なぜこの本を読んだ方が良いのか
最後に、この本をおすすめする理由を改めてお伝えします。あなたの人生にきっと何かをもたらしてくれるはずです。
1. 生きる勇気がもらえる
読み終わった後、不思議と元気になっている自分に気づくはずです。岸田さんの言葉には、読者を励ます力があります。
辛いことがあっても、明日は来る。そしてその明日には、小さな幸せが待っているかもしれない。そんな希望を、この本は静かに手渡してくれるのです。
生きていくって、案外悪くないかもしれない。そう思わせてくれる作品です。
2. 家族との時間を大切にしたくなる
この本を読むと、家族に会いたくなります。当たり前の日常が、どれほど尊いものか気づかされるからです。
今すぐ実家に電話したくなったり、久しぶりに家族で食事をしたくなったり。そんな気持ちが自然と湧いてくるのです。
家族との時間は、いつか終わりが来ます。だからこそ、今を大切にしたい。この本はそう思わせてくれます。
3. 笑って泣ける読書体験
読書の醍醐味は、感情が揺さぶられることです。この本には、笑いと涙が詰まっています。
ページをめくるたびに表情が変わる。そんな豊かな読書体験ができる作品は、そう多くありません。心が動く瞬間を、ぜひ味わってください。
読み終わった後、きっと誰かにこの本を勧めたくなるはずです。
おわりに
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は、家族の形を問い直す一冊です。岸田奈美さんの明るく温かい文章が、読者の心にそっと寄り添ってくれます。
家族だからといって、無理に仲良くする必要はありません。大切なのは、自分が選んだ関係の中で幸せを感じることです。この本が伝えてくれるメッセージは、きっとあなたの人生の支えになってくれるでしょう。笑って、泣いて、そして少しだけ前向きになれる。そんな読書体験を、ぜひ味わってみてください。
