【ベンチャー人事のすごい仕組み】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:村上亮)
「人が定着しない」「成長が止まった」そんな悩みを抱えている会社は、もしかしたら人事制度に問題があるのかもしれません。大企業の真似をしても上手くいかないのは、ベンチャーには全く違う仕組みが必要だからです。
この本は、14社連続でIPOを成功させたカリスマ人事コンサルタント・村上亮さんが書いた初めての著書です。300社以上の企業を支援してきた実践知が詰まっていて、読めば「なるほど、そういうことか!」と腑に落ちる瞬間がたくさんあります。人事制度は経営者からの”無言のメッセージ”であり、会社の成長を左右する重要な仕組みなのだと教えてくれます。
どんな本?なぜ注目されているのか
ベンチャー企業の人事改革に特化した、実践的な一冊です。単なる理論書ではなく、リアルな企業事例を通して「どう変えれば組織が変わるのか」を具体的に示してくれます。
14社連続IPO成功の”負けなし”人事コンサルタントが書いた初の著書
著者の村上亮さんは、IPOを目指す企業のコンサルティングで一度も失敗していません。14社すべてで上場を実現させているという驚異的な実績を持っています。
その秘密が「人事制度の仕組み」にあるというのが本書のメインテーマです。どんなに優れた戦略があっても、人事の仕組みが整っていなければ実行できない。この当たり前のことを、多くの企業が見落としているのかもしれません。
「負けなし」という肩書きは伊達ではなく、村上さんが企業の真の病巣を見抜く目を持っているからこその結果でしょう。本書にはその診断力と処方箋が惜しみなく公開されています。
300社以上の人事改革に携わった実践知が詰まっている
理論だけを語る本ではありません。村上さんは300社以上の人事制度構築に関わってきた経験があり、その中で得た生々しい知見が随所に散りばめられています。
特に印象的なのは、失敗事例も包み隠さず紹介している点です。「こうすれば上手くいく」だけでなく、「こうしたら失敗する」というパターンも明確に示してくれます。
実際の企業名は伏せられていますが、7社の詳細な事例が掲載されており、読んでいると自分の会社に当てはまる部分が必ず見つかるはずです。
大企業の常識が通用しないベンチャーの人事を徹底解説
ベンチャー企業と大企業では、必要な人事制度がまるで違います。大企業の成功事例をそのまま持ち込んでも、むしろ組織を混乱させることになりかねません。
本書は「ベンチャー企業特有の課題」に焦点を当てています。少人数で高速成長を目指す環境では、柔軟性とスピード感が何より大切です。
流行の人事制度に飛びつくのではなく、自社のビジネスモデルと成長フェーズに合った仕組みを作る。この原則を徹底的に説いているのが本書の特徴です。
著者・村上亮さんはどんな人?
株式会社kokonotsuの代表取締役であり、社会保険労務士の資格も持つ異色の経営者です。起業家、コンサルタント、専門家という3つの顔を持っています。
早稲田大学院MBA取得後、異色の経歴を持つ人事のプロ
村上さんは早稲田大学でMBAを取得した後、人事コンサルタントの道に進みました。理論と実践の両方を備えた専門家として、多くの企業から信頼を得ています。
社会保険労務士という国家資格を持ちながら、経営視点で人事を語れるのが強みです。制度設計の技術的な部分と、経営戦略としての人事の両面を理解しているからこそ、実効性のある提案ができるのでしょう。
さらに興味深いのは、村上さん自身が経営者として会社を運営していることです。コンサルタントとして外から見るだけでなく、当事者としての苦労も知っているという点が説得力を生んでいます。
六本木ヒルズのIT企業を上場に導いた実績
具体的な社名は明かされていませんが、村上さんは六本木ヒルズに拠点を置くIT企業の上場支援で大きな成功を収めました。この経験が、後のIPO連勝記録につながったのかもしれません。
IT業界は特に人材の流動性が高く、人事制度の設計が難しい分野です。そこで結果を出せたことが、村上さんの実力を証明しています。
上場という大きな目標に向けて、人事面からどうサポートするか。その方法論が本書には凝縮されています。
株式会社kokonotsuの代表として企業の成長を支援
現在は株式会社kokonotsuの代表取締役として、ベンチャー企業を中心に組織人事のコンサルティングを提供しています。「kokonotsu」という社名には、「9つの病を治す」という意味が込められているのかもしれません。
村上さんの支援を受けた企業は、採用から評価制度、組織文化の構築まで、トータルで人事改革を進めることができます。単発のアドバイスではなく、伴走型の支援スタイルが特徴です。
本書は、そんな村上さんの初の著書として2025年9月に発売されました。これまでコンサルティングの現場でしか語られなかった知見が、ついに一冊の本にまとまったのです。
こんな人におすすめの一冊
人事担当者だけでなく、経営者や起業を考えている人にも役立つ内容です。組織づくりに悩んでいるなら、きっとヒントが見つかります。
人が定着せず離職率に悩んでいる経営者
せっかく採用しても、すぐに辞めてしまう。そんな悩みを抱えている経営者には特に読んでほしい本です。離職の原因は給与だけではありません。
本書に登場するF社の事例では、高学歴人材を採用しても次々と辞めていく状況が描かれています。問題の本質は「制度ミスマッチ」にありました。
会社が求める人材像と、実際に採用している人材がズレている。この根本的な問題を解決する方法が、具体的に示されています。離職率が改善すれば、採用コストも大幅に削減できるでしょう。
成長が止まってしまった理由がわからない企業
以前は順調だったのに、ある時から急に成長が鈍化する。そんな企業は「人事制度の9つの病」のどれかにかかっている可能性があります。
例えば「ガラケー体質症候群」は、会社が大きくなっても昔のやり方を手放せない状態を指します。創業期のノリのままで100人の組織を運営しようとすれば、無理が生じるのは当然です。
本書を読めば、自社がどの病にかかっているのか診断できます。そして、それぞれの病に対する処方箋も用意されているのです。
IPOを目指しているベンチャー・スタートアップ
上場を目指すなら、人事制度の整備は避けて通れません。審査の過程で必ずチェックされる項目だからです。
村上さんは14社連続でIPOを成功させていますから、上場企業に求められる人事制度の水準を熟知しています。どのタイミングで、どんな制度を導入すべきか。そのロードマップが本書には描かれています。
IPOは経営者にとって大きな目標ですが、そこに至るまでの組織づくりこそが本当の勝負です。本書は、その道筋を照らしてくれるでしょう。
人事制度を見直したいと考えている人事担当者
現場の人事担当者にとっても、非常に実践的な内容です。「人事制度マッピング×ソーシャルスタイル診断」という独自の手法は、すぐにでも試してみたくなります。
従業員一人ひとりの特性を把握し、それに合った制度を設計する。当たり前のようで、実際にできている会社は少ないのではないでしょうか。
本書には具体的なフレームワークが紹介されているので、明日からでも実践できる内容が満載です。上司を説得する材料としても使えるでしょう。
本の内容を詳しく紹介
全体を通して、理論と実践がバランスよく配置されています。読み進めるうちに、自社の課題が見えてくる構成になっています。
企業成長は「人事制度の仕組み」で決まる
本書の核心は、この一文に集約されています。どれほど優れたビジネスモデルがあっても、それを実行する人と組織がなければ絵に描いた餅です。
人事制度は単なる管理ツールではありません。経営者が従業員に送る「無言のメッセージ」なのです。どんな人を評価するのか、どんな働き方を推奨するのか。制度の中にそのメッセージが込められています。
従業員は制度を通して、会社が本当に大切にしているものを読み取ります。言葉でどれだけ美しいことを語っても、制度が伴っていなければ信用されません。だからこそ、人事制度の設計は経営そのものだと言えるのです。
人事制度に潜む「9つの病」とは?
本書では、ベンチャー企業がかかりやすい病を9つのパターンに分類しています。この分類が非常にわかりやすく、自社に当てはめて考えやすいのが特徴です。
「パッケージ中毒症候群」は、流行の制度を安易に取り入れてしまう病です。Googleの20%ルールのような有名な制度を真似しても、自社の文化と合っていなければ機能しません。
「カリスマ暴走症候群」は、経営者の理想を優先しすぎて従業員の特性を活かせない状態を指します。「見栄っぱり症候群」は、背伸びした制度で経営を圧迫してしまうケースです。どれも耳が痛い話ばかりですが、多くの企業が陥りがちな罠だと言えます。
9つすべてを覚える必要はありません。ただ、自社がどれかの病にかかっていないか、定期的にチェックする習慣をつけることが大切でしょう。
「人事制度マッピング×ソーシャルスタイル診断」という独自手法
村上さんが開発した診断手法が、本書の大きな特徴です。これは会社の現状を可視化するためのツールで、問題の所在を明確にしてくれます。
人事制度マッピングでは、現在の制度がどのような構造になっているかを図式化します。給与体系、評価制度、福利厚生など、バラバラに存在する制度の関係性が一目でわかるようになります。
一方、ソーシャルスタイル診断は従業員の特性を4つのタイプに分類する手法です。エミアブル型、ドライバー型、アナリティカル型、エクスプレッシブ型。それぞれに適した働き方やマネジメント方法が異なります。この2つを組み合わせることで、制度と人のミスマッチが明らかになるのです。
会社の成長フェーズで必要な人事制度は全く違う
創業期、成長期、拡大期、安定期。それぞれのフェーズで求められる人事制度は大きく異なります。これを理解していないと、間違ったタイミングで間違った制度を導入してしまいます。
創業期は少数精鋭で、細かいルールよりも柔軟性が重要です。しかし成長期に入ると、ある程度の仕組み化が必要になります。50人、100人と増えていく中で、創業メンバーの感覚だけで組織を回すのは限界があるからです。
本書では、各フェーズで何を優先すべきかが具体的に示されています。特に興味深いのは、「同質性を武器にする段階」と「多様性を取り入れる段階」の見極め方です。小さい組織では同質性が強みになりますが、規模が大きくなれば多様性が不可欠になります。そのタイミングを見誤ると、成長が止まってしまうのです。
7社の事例から学ぶリアルな人事改革
本書の白眉は、実際の企業事例が7社も紹介されていることです。どれも生々しく、読んでいて「うちの会社もこれだ」と思わせられます。
F社の事例:「MARCH以上を採用しない」という逆転の発想
最も衝撃的だったのが、このF社の事例です。従業員20名規模の中小企業が、あえて高学歴人材を採用しないという戦略を取ったのです。
一般的には、優秀な人材を採用しようとすれば学歴が高い人を選びがちです。しかしF社では、その常識が通用しませんでした。
「MARCH以上の高学歴人材を採用しない」という方針は、決して学歴差別ではありません。自社のビジネスモデルと組織フェーズに合う人材像を明確に定義した結果なのです。この思い切った判断が、後に大きな成果を生むことになります。
高学歴人材が組織に馴染まなかった理由
F社は消耗品ビジネスで安定収益を上げていましたが、新規事業に挑戦するたびに失敗していました。経営者は「ゼロイチ人材が不足している」と考え、高学歴人材を次々と採用します。
ところが結果は散々でした。採用した人材は組織に馴染まず、次々と離職していきます。給与水準を上げても、働く環境を整えても、状況は改善しませんでした。
根本的な問題は「制度ミスマッチ」にあったのです。F社が本当に必要としていたのは、新規事業を立ち上げる人材ではなく、既存事業を安定的に支える人材でした。しかし採用していたのは、チャレンジ志向が強く、ルーティンワークを嫌うタイプの人たち。この根本的なズレが、すべての問題を生んでいたのです。
エミアブル型人材を採用して離職率が劇的に改善
村上さんの診断により、F社が求めるべき人材像が明確になりました。それは「エミアブル型」と呼ばれる、協調性が高く安心・安全な環境を好むタイプの人材です。
採用基準を大きく転換し、「クラスの隅で小説を読んでいるような人」をイメージして採用を行いました。この表現が絶妙で、派手さはないけれど真面目にコツコツ働けるタイプを指しています。
さらに新卒採用を強化することで、社風への適合度を高めました。まっさらな状態で入社してもらえば、F社のやり方を自然に身につけてもらえます。この戦略が功を奏し、離職率は劇的に改善しました。給与水準は決して高くないにもかかわらず、人が定着するようになったのです。
給与より環境を重視する従業員層の見極め方
F社の成功のもう一つの要因は、評価制度と福利厚生の見直しでした。成果偏重の評価から、協調性や貢献度を重視する定性的評価へと転換したのです。
福利厚生も、単に手当を増やすのではなく、柔軟な勤務体系や部活動・イベントの導入など、心理的安全性を高める施策にシフトしました。
これは「お金よりも環境を重視する従業員層」を的確に捉えた結果です。すべての人が高い給与を最優先するわけではありません。働きやすさ、居心地の良さ、仲間との関係性を大切にする人も多いのです。F社はそこに気づき、その層に向けた環境を整えたことで、安定した組織運営を実現しました。
人事制度を成功させる4つのステップ
本書では、制度構築のプロセスが4つのステップで整理されています。この順序が非常に重要で、飛ばすとうまくいきません。
問診:会社と従業員の現状を徹底的に把握する
まずは現状を知ることから始まります。医者が患者を診察するように、会社の状態を細かく調べていくのです。
どんな人が働いているのか、どんな制度が機能しているのか、どこに不満が溜まっているのか。経営者の思い込みではなく、実際のデータや従業員の声を集めることが大切です。
人事制度マッピングとソーシャルスタイル診断を使えば、客観的に現状を可視化できます。問題がどこにあるのか、なぜ上手くいっていないのか。その原因が明らかになって初めて、次のステップに進めるのです。
共創:経営者と従業員が一緒に制度を作り上げる
制度は経営者が一方的に決めるものではありません。従業員も巻き込んで、一緒に作り上げていくプロセスが重要です。
トップダウンで押し付けられた制度は、現場で機能しないことが多いものです。実際に働く人たちの意見を聞き、現場の実情に合った仕組みを考える。この「共創」のプロセスが、制度への納得感を生みます。
もちろん、すべてを多数決で決めるわけではありません。最終的な意思決定は経営者が行います。ただ、そこに至るまでの議論に従業員が参加できることが、制度の浸透につながるのです。
逆算思考:目指すゴールから必要な制度を設計する
「今の問題を解決する」だけでは不十分です。3年後、5年後にどんな会社になっていたいのか。そのゴールから逆算して、必要な人事制度を設計します。
例えばIPOを目指すなら、上場企業として求められる水準を満たす制度が必要です。売上100億円を目指すなら、その規模に耐えられる組織体制が必要になります。
将来のあるべき姿を描き、そこに至るまでのステップを明確にする。この逆算思考があるからこそ、一貫性のある制度設計ができるのです。
トライ&エラー:仮説と検証を繰り返して進化させる
制度は一度作ったら終わりではありません。実際に運用してみて、うまくいかない部分があれば修正していく。この繰り返しが大切です。
「制度これで満足症候群」という病があります。制度を作ったことに満足して、実際には使われていない状態です。これでは意味がありません。
本書では、仮説と検証を通じて制度を進化させていくアプローチが推奨されています。完璧を目指すよりも、まず動かしてみる。そして現場の反応を見ながら改善していく。この柔軟性こそが、ベンチャー企業には必要なのです。
読んでわかった大切なこと
本書を通読して、いくつかの重要な気づきがありました。どれも当たり前のようで、実践できている企業は少ないものばかりです。
流行の制度を真似しても意味がない
「パッケージ中毒症候群」は、多くの企業が陥る罠です。Googleの20%ルールやNetflixの自由と責任の文化など、有名企業の制度に憧れて導入しようとします。
しかし、それらの制度が機能するのは、その会社の文化や従業員の特性と合っているからです。表面だけを真似しても、土台が違えば意味がありません。
大切なのは「なぜその制度が必要なのか」を自社の文脈で考えることです。他社の成功事例は参考になりますが、そのまま持ち込んでも失敗します。自社のビジネスモデル、成長フェーズ、従業員の特性。これらすべてを考慮した上で、オリジナルの制度を設計する必要があるのです。
人事制度は経営者からの”無言のメッセージ”
この表現が、本書の中で最も印象に残りました。制度の一つひとつに、経営者の価値観が表れています。
成果主義の評価制度を導入すれば、「結果を出す人が評価される」というメッセージになります。年功序列を残せば、「長く勤めることに価値がある」というメッセージです。
従業員は、経営者の言葉よりも制度を見ています。どれだけ「チームワークが大切」と言っても、評価が完全に個人成果だけで決まるなら、誰も協力しようとしません。言葉と制度が一致していることが、信頼関係の基盤になるのです。
同質性の段階と多様性の段階を見極める必要がある
F社の事例が示すように、小規模な組織では同質性が強みになることがあります。価値観が共有されていれば、コミュニケーションコストが下がり、意思決定も早くなります。
しかし規模が拡大すれば、多様性が不可欠になります。同じようなタイプの人ばかりでは、新しいアイデアが生まれにくくなるからです。
どのタイミングで多様性を取り入れるか。この見極めが、成長の鍵を握っています。早すぎると組織が混乱し、遅すぎると成長が止まる。ちょうど良いタイミングを逃さないことが、経営者の重要な仕事なのでしょう。
人事は経営戦略と切り離せない
本書を読んで最も強く感じたのは、人事が経営の中核だということです。人事部門の仕事としてではなく、経営者自身が向き合うべきテーマなのです。
事業戦略を立てる時、必ず「誰がやるのか」という問いがついて回ります。優れた戦略も、実行できる人材がいなければ絵に描いた餅です。
逆に言えば、適切な人事制度があれば、戦略の実行力が高まります。人材採用、育成、評価、処遇。これらすべてが経営戦略と連動していることが理想です。本書は、その理想を実現するための具体的な方法を教えてくれます。
読書感想文を書くときのポイント
この本を題材に読書感想文を書くなら、以下のような視点で考えてみると良いでしょう。
自分の会社や組織の課題と照らし合わせて考える
本書は実践的な内容なので、自分の経験と結びつけやすいはずです。アルバイト先、学校の部活動、サークルなど、何らかの組織に属していれば必ず参考になる部分があります。
「うちの会社もこの病にかかっているかも」と思った箇所はありませんでしたか。9つの病のうち、どれが一番身近に感じられたでしょうか。
具体的なエピソードを交えて書くと、説得力のある感想文になります。理論だけでなく、自分の体験と重ね合わせることで、学びが深まるのです。
本で紹介された事例の中で共感した部分を選ぶ
7社の事例の中から、最も印象に残ったものを一つ選んでみましょう。F社の「MARCH以上を採用しない」戦略でも良いですし、別の企業の取り組みでも構いません。
なぜその事例が印象に残ったのか。自分の価値観や経験と、どう関係しているのか。そこを掘り下げて書くと、オリジナリティのある感想文になります。
事例を単に要約するのではなく、そこから何を学んだか、どう感じたかを中心に書くことが大切です。
「人事制度の9つの病」の中で当てはまるものはあるか
9つの病は、多くの組織が抱える問題を言語化したものです。自分が所属する組織(会社、学校、部活など)に当てはめて考えてみましょう。
例えば「ガラケー体質症候群」は、昔のやり方に固執している状態です。「制度ミスマッチ症候群」は、ビジネスモデルと人事制度が合っていない状態を指します。
どの病が当てはまるか診断し、それに対してどんな処方箋が考えられるか。自分なりの提案を書いてみると、考えが深まります。
自分ならどんな人事制度を作りたいか具体的に書く
もし自分が経営者だったら、どんな人事制度を作りたいか。この問いに答えてみるのも面白いでしょう。
給与はどう決めるか、評価基準は何にするか、どんな人を採用したいか。本書で学んだ原則を応用しながら、自分なりの理想の制度を描いてみてください。
完璧である必要はありません。むしろ、考える過程で本書の内容を自分のものにできることに価値があります。
この本から広がる考え方
本書は人事制度の本ですが、そこから派生して様々なテーマが見えてきます。
ビジネスモデルと人材のマッチングがすべて
F社の事例が教えてくれるのは、ビジネスモデルに合った人材を採用することの重要性です。消耗品ビジネスという安定収益モデルには、コツコツ働けるエミアブル型人材が適していました。
これは他の業界にも当てはまります。革新的な製品を次々と生み出す会社なら、チャレンジ精神旺盛な人材が必要でしょう。一方、品質管理が命の製造業なら、細部にこだわれる人材が重要です。
どんな人材が優秀かは、ビジネスモデルによって変わります。この視点を持つだけで、採用の失敗を大きく減らせるはずです。
採用の常識を疑うことで新しい可能性が見えてくる
「高学歴=優秀」という思い込みを捨てたF社の判断は、多くの経営者にとって勇気のいる決断だったでしょう。しかしその結果、離職率が劇的に改善しました。
世の中には様々な「常識」があります。新卒一括採用、年功序列、終身雇用。これらが本当に自社に必要なのか、一度立ち止まって考えてみる価値があります。
常識を疑うことは、決して否定することではありません。なぜそれが常識なのか、自社にとって意味があるのか。そう問い直すことで、新しい可能性が開けるのです。
心理的安全性が組織の安定につながる
F社が導入した施策の多くは、心理的安全性を高めるものでした。柔軟な勤務体系、部活動、イベント。これらは単なる福利厚生ではなく、居心地の良い職場を作るための投資です。
心理的安全性が高い組織では、従業員が自分らしく働けます。失敗を恐れずに意見を言える、困った時に助けを求められる。そんな環境があれば、人は長く働き続けようと思うものです。
給与を上げるだけが人材確保の方法ではありません。むしろ、働きやすい環境を整えることの方が、長期的には効果的かもしれないのです。
人事の力で企業文化は変えられる
本書の根底にあるのは、「人事制度が文化を作る」という考え方です。文化は自然に生まれるものではなく、意図的に設計できるものなのです。
どんな行動を評価するか、どんな人を採用するか、どんなルールを設けるか。これらの積み重ねが、企業文化を形成していきます。
もし今の企業文化に満足していないなら、人事制度を見直すことから始められます。文化を変えるのは難しいと思われがちですが、制度という具体的な仕組みを通せば、着実に変えていけるのです。
なぜこの本を読んだ方がいいのか
最後に、この本を読む価値について改めて考えてみます。
人事制度の失敗パターンを事前に知ることができる
9つの病を知っておくだけで、多くの失敗を回避できます。他社が陥った罠を、自社で繰り返す必要はありません。
特にこれから起業しようとしている人や、組織を大きくしようとしている経営者にとって、この知識は非常に価値があります。失敗してから学ぶのではなく、事前に学んでおける。それだけでも本書を読む意義は大きいでしょう。
予防医学のように、病気になる前に対策を打てる。これほど実践的な知恵はありません。
実例が豊富で自社に応用しやすい
理論書ではなく、実践書としての価値が高いのが本書の特徴です。7社の詳細な事例が掲載されており、どれも具体的で参考になります。
「こういう状況では、こう対処する」という処方箋が明確に示されているため、自社に応用しやすいのです。抽象的な理論だけでなく、現場で使える知識が満載です。
読んだ翌日から実践できる内容が多く、即効性があります。本棚に飾っておくのではなく、実際に使える本なのです。
ベンチャーだけでなくあらゆる企業規模に活かせる知見
タイトルに「ベンチャー」とついていますが、大企業にも中小企業にも通用する原則が書かれています。組織の規模を問わず、人事の本質は変わらないからです。
特に「成長フェーズに応じた制度設計」という視点は、どんな企業にも必要です。今は小さくても、いずれ大きくなる。その時に備えて、人事の基本を学んでおく価値があります。
逆に、大企業の中で新規事業を立ち上げる場合も、本書の知見は役立ちます。既存の人事制度をそのまま適用するのではなく、事業の特性に合わせて柔軟に考える。その発想が得られるのです。
人を大切にする経営の本質が学べる
本書を通して伝わってくるのは、村上さんの「人を大切にする」姿勢です。制度は人を管理するためのものではなく、人が活躍するためのものだという考え方が根底にあります。
従業員一人ひとりの特性を理解し、その人に合った働き方を提供する。給与だけでなく、働く環境や心理的安全性にも配慮する。こうした姿勢こそが、持続的な成長につながるのです。
効率化やコスト削減も大切ですが、その前に「人」があります。人が幸せに働ける環境を作ることが、結果的に会社の成長につながる。そんな当たり前のことを、本書は思い出させてくれます。
おわりに
人事制度というと難しく感じるかもしれませんが、本質はシンプルです。どんな人と、どう働きたいか。この問いに真摯に向き合うことから、すべてが始まります。
本書が教えてくれるのは、正解は一つではないということです。それぞれの会社に、それぞれの最適解があります。大切なのは、自社の状況を正しく理解し、そこに合った仕組みを作ること。そして作った後も、常に改善し続けることです。
村上亮さんの14社連続IPO成功という実績は、偶然ではありません。人と組織に真剣に向き合い、一社一社に合った処方箋を提供してきた結果なのでしょう。この本を読めば、その姿勢と方法論を学ぶことができます。組織づくりに悩むすべての人に、手に取ってほしい一冊です。
