【ゆびさきに魔法】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:三浦しをん)
「ネイルサロンなんて、派手な爪にするだけの場所でしょう」
もしそんな風に思っているなら、この本を読んでみてください。三浦しをんさんの最新作『ゆびさきに魔法』は、ネイリストという仕事の奥深さを、笑いと涙と温かさで包み込んだお仕事小説です。2024年11月に発売されたばかりのこの作品は、東京の商店街でネイルサロンを営む月島美佐と、新米ネイリスト大沢星絵のバディ物語。華やかなネイルアートの裏側にある職人技や、巻き爪矯正といった地味だけど大切な仕事まで、ネイリストの日常が驚くほど丁寧に描かれています。
「舟を編む」や「まほろ駅前多田便利軒」で知られる三浦しをんさんが、今度はネイルの世界へ飛び込みました。恋愛に頼らず、仕事人として生きる女性たちの姿が眩しいです。読み終わる頃には、きっとネイルサロンへ行きたくなるはずです。
三浦しをんの最新作「ゆびさきに魔法」ってどんな本?
三浦しをんさんが贈る、ネイリストの世界を描いた最新お仕事小説です。派手さの裏側にある職人の技術と、人と人とのつながりを温かく描いています。
1. 2024年11月発売のお仕事小説
2024年11月25日に文藝春秋から発売されたばかりの作品です。三浦しをんさんといえば、辞書編纂を描いた「舟を編む」や、林業の世界を描いた「神去なあなあ日常」など、様々な職業の現場を丁寧に取材して小説にすることで知られています。今回の舞台はネイルサロン。実は三浦さん自身がネイル好きで、ネイルオブザイヤーも受賞されているそうです。だからこそ、ネイリストという仕事への愛情と敬意が、ページの隅々まで溢れています。
発売直後から書評でも話題になり、「いいお仕事小説を読んだな」としみじみできる作品として評価されています。三浦しをんファンはもちろん、お仕事小説が好きな人なら必読の一冊です。
2. ネイリストの世界を描いた作品
ネイリストと聞くと、「ゆびさきを彩る仕事」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。でも実際は、美しいネイルアートを施すだけではありません。本作では巻き爪矯正の施術シーンも登場します。隣の居酒屋の店主が足の親指の巻き爪に悩んでいて、主人公の月島美佐がその痛みを和らげるために技術を駆使するんです。
華やかなアートと地道な施術。その両方を通して、お客様の心身の悩みに寄り添うネイリストの姿が描かれています。ネイルの必要性や素晴らしさを教えてくれると同時に、「ネイリストは見た目を綺麗にするだけの仕事」という固定観念を鮮やかに塗り替えてくれる内容です。
3. 話題になっている理由
三浦しをんさんならではの「しをん節」が炸裂する会話の面白さと、登場人物たちの濃いキャラクター。おちゃらけたムードの中に、ほろりとするシーンも散りばめられていて、読者の心をぐっと掴んで離しません。
それに加えて、恋愛要素なしで仕事に打ち込む女性たちを描いた点も新鮮です。主人公の月島美佐は30代半ば。恋愛よりも仕事に没頭してきた人生です。そんな彼女が新米ネイリストの大沢星絵と出会い、バディとして成長していく過程が、読む人の心を動かします。働くすべての人に響く物語だからこそ、多くの読者から支持されているのでしょう。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 三浦しをん |
| 発売日 | 2024年11月25日 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| ジャンル | お仕事小説 |
著者・三浦しをんさんについて
林業から辞書編纂、文楽まで。あらゆる職業の現場を小説に変えてきた三浦しをんさんは、お仕事小説の名手として知られています。
1. 直木賞作家としての実績
三浦しをんさんは2006年に「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を受賞しています。便利屋を営む二人の男性を描いたこの作品は、後にシリーズ化され、映像化もされました。人間の生々しさとユーモアを絶妙なバランスで描く三浦さんの才能が、ここでも遺憾なく発揮されています。
直木賞作家という肩書きがありながらも、堅苦しさとは無縁。むしろ軽妙な語り口で、読者をぐいぐい物語の中へ引き込んでいきます。文学的でありながら、どこか漫画を読んでいるような感覚になるのが三浦作品の魅力です。
2. お仕事小説の名手
「舟を編む」では辞書編纂の世界を、「神去なあなあ日常」では林業の世界を描いてきました。どの作品も綿密な取材に基づいていて、その職業に就かなければ見られなかった景色を、読者に見せてくれます。
今回の「ゆびさきに魔法」でも、ネイリストの技術的な部分にかなり踏み込んでいます。施術の手順や道具の使い方、お客様との会話の仕方まで、まるで本当にネイルサロンで働いているかのような臨場感があります。三浦さんがネイル好きだからこそ書けた、愛情たっぷりの作品です。
3. 主な代表作と特徴
「風が強く吹いている」では箱根駅伝を、「まほろ駅前多田便利軒」では便利屋を、「舟を編む」では辞書編纂を描いてきました。どの作品にも共通するのは、仕事に打ち込む人々への温かい眼差しです。
三浦作品の登場人物は、どこか濃くてはっきりした個性を持っています。読み終わる頃には、まるで本当に知り合いになったかのような親しみを感じるのです。そして軽妙な会話の中に、人生の深い洞察が隠されている。そんなバランス感覚が、三浦しをんさんの真骨頂といえるでしょう。
こんな人におすすめ
ネイル好きな人はもちろん、仕事について考えたい人、女性の生き方に興味がある人にもぴったりの一冊です。
1. ネイルが好きな人・興味がある人
ネイルをしたことがある人なら、読んでいて「わかる!」と頷く場面がたくさんあるはずです。一度ハマるとずっとしてしまう、ネイルの魔法。爪が綺麗だと心も晴れる、あの不思議な感覚。
この本には美しいネイルアートの描写がたくさん登場します。繊細な技術で描かれる模様や、季節に合わせたデザイン。読んでいるだけで、自分の爪も綺麗にしたくなってきます。ネイル愛好者なら、この作品を読んでネイルがもっと好きになるはずです。
興味はあるけれど一歩を踏み出せなかった人には、そっと背中を押してくれる内容でもあります。ネイルサロンって敷居が高そう、と思っている人こそ読んでほしいです。
2. お仕事小説が好きな人
お仕事小説が好きな人にとって、この作品は間違いなく当たりです。その仕事に就かなければ見られなかった景色を、小説を通して体験できる。これこそがお仕事小説の醍醐味ではないでしょうか。
ネイリストという職業の奥深さ、技術の繊細さ、お客様との関わり方。様々な角度からネイリストの仕事が描かれています。施術の技術的な部分だけでなく、商店街の人々との交流や、サロン経営の苦労も丁寧に描写されています。
読み終わった後には「いいお仕事小説を読んだな」としみじみできる、そんな満足感があります。
3. 女性の生き方について考えたい人
主人公の月島美佐は30代半ば。恋愛よりも仕事に没頭してきた女性です。この設定が、とても新鮮に感じられます。恋愛に頼らない女性像を描いた点が、多くの読者の心を掴んでいるんです。
仕事をする上での苦悩や、才能の差に対する葛藤。同僚への嫉妬や、相手を想うがゆえの苦しみ。そうした感情に対して、どう向き合っていくのか。この作品は、働く女性が抱える様々な気持ちを丁寧にすくい上げています。
自分の心地よい居場所ってどこだろう。頑張れる場所ってどこだろう。そんなことを考えさせられる物語です。
4. 三浦しをん作品のファン
三浦しをんファンなら、これは読まずにいられないでしょう。いつもの「しをん節」が健在で、登場人物たちのおちゃらけた会話に思わず笑ってしまいます。
そして三浦作品お得意のバディ感も満載です。恋愛ではないんだけれど、その想いが切なかったりする。月島美佐が大沢星絵を想う気持ちに、読者の心も右往左往させられます。三浦しをんワールドを存分に堪能できる一冊です。
登場人物の紹介
個性豊かな登場人物たちが、物語に彩りを添えています。読み進めるほどに愛着が湧いてくる、魅力的なキャラクターばかりです。
1. 月島美佐:真面目で丁寧なネイリスト
主人公の月島美佐は、東京の富士見商店街でネイルサロン「月と星」を一人で営む30代半ばのネイリストです。真面目で丁寧な仕事ぶりが持ち味。お客様一人ひとりに寄り添い、その人に合った施術を提案します。
仕事に没頭してきたゆえに、人間関係は少し希薄です。でも、それは彼女が仕事を大切にしてきた証でもあります。新米ネイリストの大沢星絵と出会うことで、月島の心にも変化が訪れます。最初は戸惑いながらも、次第に星絵との絆を深めていく様子が、とても丁寧に描かれています。
後半では、星絵の将来を想う月島の気持ちが溢れてきます。その切なさと温かさに、読者の胸も熱くなるはずです。
2. 大沢星絵:コミュ力抜群の新米ネイリスト
大沢星絵は、とある騒ぎをきっかけに「月と星」で働くことになった新米ネイリストです。人懐こくて天真爛漫な性格で、お客様とのコミュニケーション能力は抜群。アイデアも豊富で、見どころの多いキャラクターです。
最初は月島を戸惑わせていた星絵ですが、一緒に働くうちに二人の間には確かな絆が生まれていきます。星絵の人との距離感の近さや、斬新な発想は、読者をも魅了します。
技術面ではまだまだ未熟ですが、その成長していく姿が眩しいです。月島と星絵、この二人のバディ関係こそが、物語の大きな軸になっています。
3. その他の魅力的な脇役たち
隣の居酒屋「あと一杯」の店主も、忘れてはいけない存在です。巻き爪に悩んでいた彼が、月島の施術で痛みから解放される場面は印象的です。そして彼が作る料理が、これまたおいしそうなんです。ジャガイモと鮭のみのポテトサラダ、お手製のさつま揚げ、ふわふわのフリット。読んでいるとお腹が空いてきます。
商店街の人々や、様々なお客様たち。濃いキャラクターの登場人物たちが、物語に厚みを与えています。読み終わる頃には、この人々と完全に知り合い感覚に陥ってしまうのです。
あらすじ(ネタバレあり)
ここからは物語の流れを詳しく紹介していきます。ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。
1. 物語の始まり:星絵との出会い
物語の舞台は、昔懐かしい雰囲気が漂う富士見商店街です。ここでネイルサロン「月と星」を営む月島美佐は、一人で黙々と仕事をこなす日々を送っていました。
そんなある日、とある騒ぎをきっかけに、新米ネイリストの大沢星絵を雇うことになります。人懐こくて天真爛漫な星絵に、最初は戸惑う月島。一人で仕事をすることに慣れていた彼女にとって、誰かと一緒に働くことは簡単ではありませんでした。
でも星絵の明るさとコミュニケーション能力は、サロンに新しい風を吹き込みます。お客様との距離の取り方も、月島とはまったく違う。そんな星絵の姿を見て、月島自身の考え方にも変化が表れ始めます。
2. 「月と星」の日常と成長
二人で働くようになって、サロンはどんどん賑やかになっていきます。星絵のアイデアで新しいメニューが増えたり、お客様の層も広がっていきます。おちゃらけた会話でクスクス笑いながら、二人は少しずつ息を合わせていくのです。
技術面では月島の方が上ですが、星絵には星絵の良さがあります。お客様を笑顔にする力、場を和ませる雰囲気。そうした才能に、月島も少しずつ気づいていきます。
一緒に働くうちに、二人の間には師弟のような、でも友達のような、不思議な絆が芽生えていきます。この関係性の変化が、物語の大きな見どころです。
3. 様々なお客様とのエピソード
隣の居酒屋「あと一杯」の店主は、足の親指の巻き爪に悩んでいました。痛みで歩くのもつらい状態でしたが、月島の巻き爪矯正の施術によって、その痛みが和らいでいきます。ネイルアートだけではない、ネイリストの大切な仕事がここに描かれています。
他にも、子育て中のママや、国民的俳優など、様々なお客様が登場します。それぞれが抱える悩みに、月島と星絵は自分たちの技術やアイデアを駆使して応えていきます。
お客様との交流を通して、二人のネイリストとしての腕も、人間としての深みも増していくのです。
4. 物語の終盤:変化と決断
後半に進むにつれて、物語には厚みが出てきます。月島が星絵の将来を想う気持ちが溢れてくるんです。才能のある星絵には、もっと広い世界があるのではないか。月島はそんなことを考え始めます。
仕事をする上での才能やセンスの差。同僚への複雑な感情。そうした苦悩に、月島は向き合っていきます。そして、自分が提案した星絵の移籍について煩悶します。
相手を敬い、時に離れたり、手放したりという選択肢もあるということ。この作品は、そんな大切なことを教えてくれます。物語の結末には、おもしろいオチもあって、いかにも三浦しをん作品らしい終わり方です。
本を読んだ感想・レビュー
読み終わって最初に思ったのは、「ネイルサロンに行きたい」ということでした。それくらい、ネイルの魅力が伝わってくる作品です。
1. ネイリストという職業への敬意
この本を読むまで、ネイリストの仕事をここまで深く考えたことはありませんでした。美しいアートを施すだけではなく、巻き爪矯正のような地味だけど大切な仕事もある。お客様の心身の悩みに寄り添い、技術で応える。それは確かに職人の仕事です。
作中に「ネイルアートはチャラついたものなどではなく、ネイリストの職人技と芸術的センスが結晶した作品」という文章があります。この一文に、三浦さんのネイルへの愛情が凝縮されています。
ネイルに対する固定観念を、この作品は鮮やかに塗り替えてくれました。読後は、ネイリストという職業への敬意でいっぱいになります。
2. 恋愛に頼らない女性像が新鮮
月島美佐は恋愛よりも仕事に没頭してきた30代半ばの女性です。この設定が、本当に新鮮でした。恋愛要素がないお仕事小説って、意外と少ないんですよね。でもこの作品は、仕事人として生きる女性の姿を真正面から描いています。
だからといって、感情の動きがないわけではありません。むしろ、月島が星絵を想う気持ちは、恋愛とはまた違う深さと切なさがあります。仕事における人間関係の豊かさを、改めて感じさせてくれる物語です。
女性の生き方は一つじゃない。そんな当たり前のことを、優しく教えてくれる作品でもあります。
3. しをん節が光る会話の面白さ
三浦しをん作品の魅力といえば、やはりあの軽妙な会話です。登場人物たちのおちゃらけたやりとりに、何度も笑ってしまいました。漫画を読んでいるような感覚になるのは、会話のテンポの良さとキャラクターの立ち方が絶妙だからでしょう。
ただ笑わせるだけではなく、会話の中に人生の深い洞察が隠されている。そのバランス感覚が素晴らしいです。クスクス笑いながら読んでいたかと思えば、ふとした一言にハッとさせられる。そんな瞬間が何度もありました。
文字の世界なのに、登場人物たちの声が聞こえてくるような気がします。これこそが三浦しをんマジックです。
4. バディものとしての魅力
月島と星絵の関係性が、この物語の最大の魅力です。師弟のようで、友達のようで、でもどちらとも言い切れない不思議な絆。三浦作品お得意のバディ感が、ここでも存分に発揮されています。
恋愛ではないのに、相手を想う気持ちが切ない。星絵の将来を案じて煩悶する月島の姿に、読者の心も揺さぶられます。二人の関係がどうなっていくのか、ページをめくる手が止まりませんでした。
最後には「そうきたか!」と思わせる展開が待っています。バディものが好きな人には、たまらない作品です。
5. 読後にネイルサロンへ行きたくなる
読み終わって、本当にネイルサロンに行きたくなりました。ネイルをしたことがある人なら、「一度ハマるとずっとしてしまう魔法」を知っているはずです。爪が綺麗だと、心まで晴れやかになる感覚。
この作品は、そんなネイルの魔法を改めて思い出させてくれます。ネイル愛好者はネイルをより好きになるし、興味はあったけど一歩を踏み出せなかった人には、背中を押してくれる内容です。
お腹も空いてきます。居酒屋「あと一杯」の料理がおいしそうで。ネイルサロンに行って、その後居酒屋で一杯。そんな休日を過ごしたくなる、幸せな読書体験でした。
読書感想文を書く場合に押さえたいポイント
読書感想文を書くなら、以下のポイントを意識すると書きやすくなります。自分の経験と結びつけることが大切です。
1. 主人公の変化と成長に注目する
月島美佐は、物語の中で大きく変化していきます。一人で仕事をしていた彼女が、星絵と出会うことで考え方を変えていく過程。この変化に注目すると、感想文が書きやすくなります。
最初は戸惑っていたのに、次第に星絵との絆を深めていく。そして後半では、星絵の将来を想って煩悶する。こうした心の動きを丁寧に追っていくと、物語の深さが見えてきます。
月島の変化のどの部分が印象に残ったか。それを自分の言葉で書いてみましょう。
2. 印象に残ったエピソードを選ぶ
巻き爪矯正の場面、居酒屋の料理の描写、二人の会話など、印象に残ったエピソードは人それぞれでしょう。その中から一つか二つを選んで、詳しく書いてみるといいです。
なぜそのエピソードが印象に残ったのか。どんな気持ちになったのか。具体的に書くことで、感想文に深みが出ます。
複数のエピソードを浅く書くよりも、一つのエピソードを深く掘り下げる方が、読み手に伝わりやすくなります。
3. 自分の経験と結びつける
ネイルをした経験がある人なら、その時の気持ちを思い出してみましょう。仕事で悩んだ経験があるなら、月島の苦悩と重ねてみるのもいいですね。
自分の経験と物語を結びつけることで、感想文はぐっと個性的になります。「私も似たような経験がある」「こんな風に考えたことがある」。そうした共感ポイントを見つけて書いてみましょう。
物語から何を感じ取ったか、それを自分の言葉で表現することが大切です。
4. 作品から学んだことを書く
この作品は、仕事との向き合い方や、人間関係について考えさせてくれます。相手を敬い、時に手放すという選択肢もあること。自分の心地よい居場所を見つけることの大切さ。
物語から何を学んだか、どんな気づきがあったか。それを最後にまとめると、感想文がきれいに締まります。説教くさくならないように、自分の言葉で素直に書くことがポイントです。
作品のテーマとメッセージ
この作品には、三浦しをんさんの深いメッセージが込められています。表面的な面白さだけではない、物語の核心に迫ってみましょう。
1. 「3週間で消える魔法」が持つ意味
タイトルにもなっている「ゆびさきに魔法」。でもネイルは3週間ほどで消えてしまう魔法です。お腹いっぱいにならないし、資産価値にもならない。
それでも、誰かの心を潤し、人生を豊かにする力がネイルにはあります。消えてしまうからこそ、その瞬間を大切にできる。そんな儚さと美しさが、ネイルの本質なのかもしれません。
小説にも同じような魔法の力がある、と三浦さんは語っています。物語もまた、読んだ人の心を豊かにする、消えない魔法なのでしょう。
2. 職人としての誇りと技術
ネイリストという仕事に対する誇りが、作品全体を貫いています。繊細な技術で描かれるアート、お客様の悩みに寄り添う施術。そこには確かな職人技があります。
「ネイルアートは職人技と芸術的センスが結晶した作品」。この言葉に込められた敬意が、読者にも伝わってきます。どんな仕事にも、その仕事ならではの誇りと技術があるんですよね。
ネイリストを通して、すべての働く人への応援歌にもなっている作品です。
3. コミュニティの力
富士見商店街という場所も、この物語の重要な要素です。隣の居酒屋の店主、商店街の人々。様々な人たちとのつながりが、月島と星絵を支えています。
人と人とのつながりの価値。地域コミュニティの温かさ。そうしたものが、ネイルサロン「月と星」を中心に描かれています。一人で頑張ることも大切ですが、誰かとつながっていることで救われることもある。
現代だからこそ響くテーマではないでしょうか。
4. 自分らしく生きることの大切さ
月島美佐は恋愛よりも仕事に没頭してきました。それは彼女が選んだ生き方です。星絵は星絵で、人との距離感が近い自分らしさを持っています。
生き方は一つじゃない。自分らしく生きることの大切さを、この作品は優しく教えてくれます。他人の価値観に縛られず、自分が心地よいと思える場所で頑張ればいい。
そんなメッセージが、働くすべての人の心に響くのだと思います。
作品から広がる考察
物語の世界から一歩踏み出して、現代社会について考えてみましょう。この作品は様々な問いを投げかけてくれます。
1. 現代における「美」の意味
ネイルという「美」を追求する仕事を通して、美とは何かを考えさせられます。見た目を綺麗にすることは、決して表面的なことではありません。爪が綺麗だと心が晴れる。それは美が持つ、心への作用です。
「何だその黒い爪は」と言われることもあるネイル。でも、誰もが自分の好きな格好を楽しめる世の中になってほしい、という三浦さんの願いが込められています。
美は人それぞれ。自分が美しいと思うものを大切にしていい。そんな多様性を認める社会であってほしいですね。
2. 女性の働き方と生き方の多様性
月島美佐のような生き方を選ぶ女性が、もっと当たり前に認められる社会になってほしいです。恋愛や結婚だけが幸せではありません。仕事に打ち込むことも、立派な生き方です。
この作品は、女性の生き方の多様性を肯定しています。30代半ばで恋愛要素なし。でも月島は充実した日々を送っているんです。星絵との関係や、お客様との交流の中で、豊かな人間関係を築いています。
女性の生き方について、改めて考えるきっかけをくれる作品です。
3. 偏見を越えていくこと
「ネイルはチャラついたもの」という偏見。この作品は、そうした固定観念を鮮やかに塗り替えてくれます。巻き爪矯正という実用的な側面も描くことで、ネイリストの仕事の幅広さを見せています。
偏見は知らないことから生まれます。知ることで、見方が変わる。この本を読んで、ネイルへの見方が変わった人は多いはずです。
男性も気軽にネイルできる社会になるといいな、という感想も見られました。偏見を越えて、誰もが自由に楽しめる世界を願います。
4. 人と人とのつながりの価値
月島と星絵のバディ関係、商店街の人々との交流。この作品は、人と人とのつながりの大切さを繰り返し描いています。
孤独に仕事をしていた月島が、星絵と出会うことで変化していく。人は一人では生きていけません。誰かとつながることで、新しい景色が見えてくる。
現代社会は便利になった分、人とのつながりが希薄になりがちです。だからこそ、この作品が描く温かな人間関係が、読者の心に響くのでしょう。
この本を読んだ方が良い理由
最後に、なぜこの本を読むべきなのか、力説させてください。本当におすすめの一冊なんです。
1. 仕事への向き合い方を見つめ直せる
月島と星絵の仕事への姿勢を見ていると、自分の仕事への向き合い方を考えさせられます。技術を磨くこと、お客様に寄り添うこと、同僚との関係を大切にすること。
仕事における才能の差や、葛藤への向き合い方。相手を敬い、時に手放すという選択肢。こうした深いテーマが、軽妙な会話の中に織り込まれています。
働くすべての人に響く物語です。読み終わった後、仕事に対する見方が少し変わっているかもしれません。
2. ネイルへの見方が変わる
ネイルに興味がなかった人も、この本を読めば興味が湧いてくるはずです。ネイルサロンって敷居が高そう、と思っていた人の背中を、そっと押してくれる内容です。
すでにネイル好きな人なら、ネイルがもっと好きになります。「ゆびさきが綺麗だと心も晴れる」という魔法。その魔法を、改めて実感できるでしょう。
読後は間違いなく、ネイルサロンに行きたくなります。
3. 元気をもらえる物語
おちゃらけた会話で笑わせてくれて、ほろりとする場面で泣かせてくれる。読んでいる間、ずっと心が動き続けます。人情味があって、読み終わると元気が出る。
疲れている時こそ読んでほしい作品です。登場人物たちの濃いキャラクターと、温かな人間関係が、きっと心を癒してくれます。
「いいお仕事小説を読んだな」としみじみできる満足感。それがこの作品の魅力です。
4. 三浦しをんワールドを堪能できる
三浦しをんファンなら、これは読まないわけにはいきません。いつもの「しをん節」が炸裂していて、期待を裏切りません。お得意のバディ感も満載。
そして綿密な取材に基づいた、リアルなネイリストの世界。三浦作品の魅力が全部詰まっています。まだ三浦しをん作品を読んだことがない人にとっても、入門編としておすすめです。
漫画を読んでいるような感覚になる、あの不思議な読書体験。ぜひ味わってみてください。
おわりに
「ゆびさきに魔法」は、ネイルという小さな世界を通して、働くことや生きることの本質を描いた作品です。3週間で消えてしまう魔法だからこそ、その瞬間が愛おしい。そんなネイルの魅力と、ネイリストという仕事への敬意が、ページの隅々まで溢れています。読み終わった後、きっとあなたもネイルサロンに行きたくなるはずです。そして自分の爪を見つめながら、小さな魔法の力を感じるでしょう。
三浦しをんさんの他の作品もぜひ読んでみてください。「舟を編む」では辞書編纂の世界を、「風が強く吹いている」では箱根駅伝を。どの作品にも、仕事に打ち込む人々への温かい眼差しがあります。お仕事小説の名手が描く世界は、いつも読者の心を豊かにしてくれるのです。
