【その本は】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:ヨシタケシンスケ・又吉直樹)
「本が好きだけど、最近ちゃんと読めていない」そんなふうに感じている方は多いかもしれません。忙しい毎日の中で、本を開く時間も気力も足りなくて。でも本当は、物語の世界に浸りたい気持ちはあるはずです。
『その本は』は、そんな気持ちに寄り添ってくれる一冊です。芥川賞作家の又吉直樹さんと絵本作家のヨシタケシンスケさんが手を組んで生まれたこの作品は、30万部を超える大ヒットになりました。読書が苦手な人にも楽しんでもらえる本を作りたい――そんな思いから誕生した物語には、本を愛する2人の優しさが詰まっています。
『その本は』はどんな本なのか?
絵本と小説の間を自由に行き来する、新しいタイプの読み物です。ページをめくるたびに、又吉さんの文章とヨシタケさんのイラストが交互に現れます。
1. 30万部超えのヒット作が生まれた背景
2022年7月に発売されてから、わずか数ヶ月で30万部を突破しました。これだけ多くの人に手に取られたのは、2人の知名度だけが理由ではありません。「本を読まない人にも読んでもらえる本」というテーマが、現代の読者の心に響いたからです。
活字離れが進んでいると言われる今だからこそ、この本の存在意義は大きいのかもしれません。読書へのハードルを下げてくれる、入り口のような作品になっています。
2. 本好きの王様と2人の男が紡ぐ物語
物語の舞台は、ある王国です。本が大好きだった王様は、目が悪くなってしまい、もう本を読むことができなくなりました。そこで王様は2人の男に頼みます。「世界中をまわって珍しい本を見つけてきてほしい。そしてその本の話をわしに教えてほしいのだ」と。
1年後、旅から戻った2人は夜ごと王様に本の話を語り聞かせます。この設定そのものが、本への愛情に満ちています。本は読むだけでなく、誰かに語り継ぐこともできる。そんなメッセージが込められているように感じます。
3. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 又吉直樹、ヨシタケシンスケ |
| 発売日 | 2022年7月26日 |
| 出版社 | ポプラ社 |
| ページ数 | 約200ページ前後 |
| 価格 | 1,650円(税込) |
著者プロフィール:2人の異色コラボが実現した理由
まったく違うジャンルで活躍する2人が、なぜ一緒に本を作ることになったのか。それには偶然の出会いと、共通する「本への愛」がありました。
1. 又吉直樹という書き手
お笑いコンビ「ピース」のボケ担当として活躍する一方、2015年には『火花』で芥川賞を受賞しました。芸人でありながら純文学を書く――そのギャップに驚いた人も多かったはずです。
でも又吉さんにとって、本を読むこと、書くことは自然な営みでした。繊細な感性と鋭い観察眼で紡がれる文章は、読む人の心をハッとさせます。今作でも、その才能は存分に発揮されています。
2. ヨシタケシンスケという絵本作家
子どもから大人まで、幅広い世代に愛される絵本を次々と生み出してきました。シンプルな線で描かれる絵は脱力系に見えて、実は高い画力に裏打ちされたものです。
誰も思いつかないような発想で、日常の「なぜ?」を形にする才能。その自由な発想力が、この本でも光っています。
3. なぜこの2人がタッグを組んだのか
きっかけは、とある児童書イベントでした。又吉さんはヨシタケ作品のファンで、ヨシタケさんは面白いことを一瞬で考える芸人に憧れがあったそうです。本を通じて意気投合した2人が、「いつもとは違う何かを書く」ことに挑戦しようと決めました。
それぞれが得意なフィールドから少しずつはみ出して、新しい表現を探る。そんな冒険心が、この本を特別なものにしています。
こんな人におすすめしたい
この本は、読む人を選びません。むしろ、自由に楽しんでほしいという願いが込められています。
1. 読書が苦手だけど本に触れてみたい人
長い小説を最後まで読み切る自信がない方にこそ、手に取ってほしい一冊です。全ての話が「その本は…」で始まる短編形式なので、好きなところから読めます。ページの順番通りに読む必要もありません。
集中力が続かなくても大丈夫。疲れたら休んで、また気が向いたときに開けばいい。そんな気楽さが、この本の魅力なのです。
2. 絵本も小説も両方好きな人
ヨシタケさんの絵と又吉さんの文章が交互に現れる構成は、読んでいて飽きません。絵だけのパート、文章だけのパート、そして絵と手書き文字が融合したパート。さまざまな表情を見せてくれます。
絵本の温かさと小説の深みを、同時に味わえる贅沢さ。こんな読書体験は、なかなかありません。
3. 自由に読書を楽しみたい人
「こう読まなければいけない」というルールは、この本にはありません。気になるページを開いてもいいし、最後から読み始めてもいい。自分なりの読み方を見つけられる自由度の高さが、心地よいのです。
読書は本来、もっと自由で楽しいものだったはず。そんなことを思い出させてくれます。
あらすじ:王様に語られる「めずらしい本」の数々
2人の男が王様に語るのは、どれも不思議な本ばかりです。現実には存在しない、架空の本たち。でもそのどれもが、妙にリアルで愛おしい。
1. 旅に出た2人の男と目が見えなくなった王様
表紙を見ると、旅人の2人がヨシタケさんと又吉さんの姿をしていることがわかります。これは遊び心でもあり、作者自身が本探しの旅に出ているようにも見えます。
王様は本が読めなくなった悲しみを抱えながら、2人の話を楽しみに待っています。目が見えなくても、耳で聞く物語は心に染み込んでいく。そんな本の別の楽しみ方が描かれています。
2. 「その本は…」から始まる多彩な物語たち
又吉パートでは、とんでもない速さで走っていて誰も読むことができない本や、警察に追われている本が登場します。ヨシタケパートでは、その国の人間はみんな持っている本だとか、輪郭がぼんやりしていて読むことができない本などが描かれます。
どの本も突拍子もないようで、どこか心に引っかかるのです。想像力をかき立てられるというか、自分でも続きを考えたくなります。
3. 印象的なエピソード:誰も死なない本の話
13の夜話の中で、特に心に残るのが第7夜「誰も死なない本」です。41ページにもわたる大長編で、多くの読者が涙したと言います。
小学5年生の岬真一のクラスに、竹内春という転校生がやってきます。将来は絵本作家になりたい2人が始める交換ノート。描いた絵にセリフを入れる遊びから、やがて交換日記へと発展していきます。このやり取りが本当に素晴らしくて、読んでいて胸が熱くなります。
この本を読んだ感想とレビュー
ページをめくるたびに、新しい驚きが待っている。そんな読書体験ができる本です。
1. 絵本と小説の境界を超える新しい読書体験
これまでにない形式の本だと感じました。絵本でもなく、小説でもなく、でもどちらの良さも持っている。ジャンルに縛られない自由さが、読んでいて心地よいのです。
又吉さんのパートは文章だけですが、情景が頭の中に浮かびます。ヨシタケさんのパートは絵と手書き文字で、温かみがあります。この2つが交互に来ることで、リズムが生まれているのだと思います。
2. ヨシタケさんの絵が生み出す温かみ
簡素に見える絵ですが、実は画力の高さを感じます。子どもだましではない、大人もうならせる表現力です。線の一本一本に、作者の優しさが滲んでいるようでした。
特に印象的だったのは、ゴリラがいっぱい出てくる話です。読んだ後に「キョトーン」としてしまう不思議さ。こういう余白のある表現が、想像力を刺激してくれます。
3. 又吉さんの言葉が届ける切なさと優しさ
又吉さんの文章は、どこまでも誠実です。言葉を大切に選んでいることが伝わってきます。特に第7夜は、小学生の頃の感性がみずみずしく描かれていて、自然と自分の子ども時代を思い出しました。
悪魔が出てくる話では「悪魔が想像以上に悪魔になってた」という一文に、思わずクスリとしました。こういうユーモアと切なさの混ざった表現が、又吉さんらしいのです。
4. 装丁にも込められた遊び心
本の中身だけでなく、装丁も素晴らしいです。「ある王国から旅に出た2人の男の話」という設定に合わせて、ページがあえて汚れていたり、ヤケがあったりします。その箇所に合わせた小ネタも仕込まれているので、ぜひ手に取って確かめてほしいです。
こういう細部へのこだわりが、本全体の世界観を豊かにしています。
読書感想文を書くときに押さえたいポイント
この本は読書感想文の題材としても、とても書きやすいと思います。
1. 心に残った「その本は」を選ぶ
13の夜話の中から、自分が一番印象に残った話を選びましょう。全部について書く必要はありません。一つの話を深く掘り下げる方が、良い感想文になります。
多くの人が選ぶのは第7夜「誰も死なない本」だと思いますが、もちろん他の話でも構いません。自分の心が動いた話を選ぶことが大切です。
2. なぜその話が印象に残ったのかを掘り下げる
ただ「感動した」「面白かった」だけでは薄い感想文になってしまいます。なぜ心が動いたのか、どのシーンが特に響いたのか。具体的に書いていきましょう。
例えば第7夜なら、交換ノートのどのやり取りが印象的だったか。竹内春という人物のどんなところに魅力を感じたか。そういう細かい部分を拾っていくといいです。
3. 自分の経験や思い出と結びつけて書く
この本を読んで、自分の小学生時代を思い出した人は多いはずです。友達との思い出や、大切にしていたノート。そういう個人的な記憶と結びつけることで、オリジナリティのある感想文になります。
本の話だけでなく、自分の話も織り交ぜる。それが読み応えのある感想文を書くコツです。
物語から読み解けるメッセージ
表面的には不思議な本の話ですが、その奥には深いメッセージが隠れています。
1. 本は読むだけじゃない、語り継がれるもの
この本の最大のテーマは、ここにあるのではないでしょうか。王様は目が見えなくても、耳で本の話を楽しめます。本は読むという行為だけでなく、誰かに語ることで新しい命を得るのです。
昔話が口承で伝えられてきたように、物語は人から人へと受け継がれていきます。その原点を思い出させてくれる作品です。
2. 想像力は誰かと共有できる
架空の本について語り合う――これは想像力の共有に他なりません。実在しない本なのに、聞いている王様の頭の中にはその本が立ち上がってくる。
2人の男が語る物語を通じて、王様は再び本の世界に触れることができました。想像力さえあれば、人は物語を分かち合えるのだと教えてくれます。
3. 一冊の本が持つ無限の可能性
登場する本はどれも奇想天外です。でもそれは、本という存在の可能性の広さを示しているようにも思えます。本はどんな形でも、どんな内容でもいい。自由で豊かな想像の産物なのです。
固定観念を外して本と向き合うこと。それがこの作品から受け取れるメッセージの一つです。
本を愛する気持ちから広がる世界
2人の作者に共通するのは、本への深い愛情です。それが作品全体に満ちています。
1. 記憶の中に生き続ける物語の力
第7夜を読んだ多くの人が、涙を流しました。それは物語が持つ力を、まざまざと見せつけられたからだと思います。言葉で紡がれた世界は、読んだ人の記憶の中でずっと生き続けます。
本を閉じた後も、心の中で物語は続いていく。そんな読書の本質を、この本は思い出させてくれるのです。
2. 読書という行為がつなぐ人と人
王様と2人の男は、本を通じてつながりました。読者である私たちも、この本を通じて又吉さんやヨシタケさんとつながっています。さらに、この本について誰かと語り合えば、その人ともつながれます。
本は孤独な営みのようで、実は人と人をつなぐ媒介なのかもしれません。
3. 現代における本の意味を問いかける
デジタル全盛の今、紙の本の存在意義が問われることもあります。でもこの作品は、本の持つ温かみや、ページをめくる楽しさを改めて教えてくれました。
形は変わっても、物語そのものの価値は変わらない。そんなメッセージを受け取りました。
この本を読むべき理由
最後に、なぜこの本を手に取るべきなのか、力説させてください。
1. 本との出会い方を教えてくれる
読書へのハードルが高いと感じている人に、この本は優しく手を差し伸べてくれます。こんな読み方もあるんだよ、こんな楽しみ方もあるんだよ、と。
本は難しいものじゃない。もっと自由に、もっと気楽に付き合っていい。そう思わせてくれる一冊です。
2. 読み終わったあと誰かに話したくなる
この本を読んだ後、きっと誰かに話したくなるはずです。「こんな本があってね」と。それこそが、この本が伝えたかったことなのかもしれません。
物語は読んで終わりじゃない。誰かと分かち合うことで、また新しい命が吹き込まれるのです。
3. 続編『本でした』へとつながる楽しみ
好評を受けて、続編『本でした』も発売されています。この本を楽しめたら、次の物語も待っています。2人の旅はまだ続いているのです。
シリーズとして長く楽しめる作品になっているのも、嬉しいポイントです。
まとめ
『その本は』を読み終えた今、本棚を見る目が少し変わった気がします。一冊一冊が、それぞれ違う世界への扉なのだと。
この本が教えてくれたのは、読書の自由さと、物語を分かち合う喜びでした。数年後にまた読み返したら、きっと違う感想を持つのでしょう。そうやって何度も楽しめる本は、人生の友だちのような存在になります。もしあなたがまだこの本を手に取っていないなら、ぜひ書店で探してみてください。ヨシタケさんの可愛らしい表紙が目印です。
