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【きのうのオレンジ】あらすじ要約・ネタバレ・考察・読書感想文・レビュー(著:藤岡陽子)

ヨムネコ

「もしも明日、自分ががんだと言われたら」

そんなことを考えたことはありますか?

実はこの本、そんな「想像できないけれど誰にでも起こりうること」を静かに、でも心にずしんと響く形で描いた小説です。書店員さんたちが涙した理由がわかります。読み終わった後、きっとあなたも誰かに「ありがとう」と伝えたくなるはずです。

藤岡陽子さんの『きのうのオレンジ』は、33歳でがんを宣告された青年の物語ですが、決してお涙頂戴の闘病記ではありません。むしろ、日常の中にある小さな奇跡や、家族の絆、人が生きるということの意味を丁寧に描いた作品です。ここでは、あらすじから感想、読書感想文のポイントまで、この本の魅力を余すことなくお伝えします。

『きのうのオレンジ』はどんな本?書店員が涙した感動作

この作品は2020年に集英社から刊行され、瞬く間に書店員さんたちの心を掴みました。本屋大賞の一次投票で11位にランクインするほど、静かな話題を呼んだ小説です。

書店員100名が心を震わせた理由

全国の書店員100人が感動したという事実が、この本の力を物語っています。

でも、なぜこれほど多くの人の心に響いたのでしょうか?

それは、この物語が「感動を誘わない」からこそ感動的だという逆説にあります。重い病を宣告される若い主人公。そこから物語は静かに、でも確実に展開していきます。大仰な悲壮感もお涙頂戴の展開もありません。ただ、人間への深い信頼と情愛がリアルに描かれているのです。

本の基本情報

項目内容
書名きのうのオレンジ
著者藤岡陽子
出版社集英社
発売日2020年11月
価格1,600円(税別)

この本は単行本として刊行された後、集英社文庫としても発売されています。

なぜ今、この本が注目されているのか

誰の人生にも起こりうる、想定外かつ理不尽な展開。

それがこの本のテーマです。

二人に一人ががんにかかると言われる時代、この物語は決して他人事ではありません。でも、この作品が注目されているのは、恐怖を煽るためではなく、どんな状況に置かれても人は変われるし成長できるということを教えてくれるからです。特にコロナ禍を経験した私たちにとって、当たり前の日常が突然失われることのリアリティが、以前よりもずっと身近に感じられるようになりました。

著者・藤岡陽子さんはどんな人?

藤岡陽子さんは、ただの作家ではありません。医療現場で実際に患者さんと向き合っている、現役の看護師でもあるのです。

現役看護師として働く作家

藤岡さんは脳外科の看護師として、今も医療の最前線で働いています。

この経歴が、作品に独特のリアリティを与えているのです。

病院の匂い、医療スタッフの動き、患者さんの表情の変化。こうした細部に宿るリアルさは、実際に現場にいる人でなければ書けません。でも藤岡さんの作品は、医療の専門知識をひけらかすのではなく、あくまで人間の心の動きを丁寧に描くことに重点を置いています。

これまでに生み出してきた作品たち

藤岡さんは『きのうのオレンジ』以前にも、数々の作品を発表してきました。

『手のひらの音符』や『満天のゴール』など、人の心の機微を描いた作品で知られています。

どの作品にも共通しているのは、登場人物への深い愛情と、人生の意味を問いかける姿勢です。派手な展開や劇的な演出に頼らず、静かに、でも確実に読者の心に届く物語を紡いできました。それが藤岡文学の魅力だと言えるでしょう。

医療現場での経験が作品に与える影響

『きのうのオレンジ』について、藤岡さん自身が「これまで医療従事者側の視点で書くことが多かったが、今回は患者側の視点で書いた」と語っています。

がんが発覚してからの心理、ショックを受け、恐怖に襲われる過程。

これらを患者の視点から丁寧に描けるのは、日々患者さんと向き合っている藤岡さんだからこそです。医療者として見てきた数多くの「生きること」と「死ぬこと」が、この作品の深みを作り出しているのです。

こんな人におすすめ!読んでほしい人

この本は、特定の誰かのためだけの本ではありません。でも、特に心に響く人がいるのも確かです。

家族の大切さを改めて感じたい人

日常に忙殺されて、家族との時間をなおざりにしていませんか?

この本を読むと、家族という存在の尊さが身に染みてわかります。

主人公の遼賀と弟の恭平の関係、母親の言葉、そして家族それぞれが抱える想い。普段は言葉にしない「大切に思っている」という気持ちが、静かに描かれています。読み終わった後、きっと実家に電話したくなるはずです。

人生について深く考えたい人

「自分はどう生きるべきか」という問いに、この本は向き合わせてくれます。

30代でがんを宣告されるという理不尽な状況の中で、主人公はどう生きることを選ぶのか。

それは決して特別なことではなく、日々を丁寧に生きるという選択です。でもその「丁寧さ」がどれほど難しく、そしてどれほど尊いことかを、この物語は教えてくれます。人生の節目にいる人、何かに迷っている人にこそ読んでほしい一冊です。

温かい気持ちになれる小説を探している人

闘病の話は辛いものですが、この作品は読み終わった後に温かい気持ちになれます。

それは、登場人物たちが互いを思いやり、支え合う姿が描かれているからです。

看護師の泉、弟の恭平、バイトの高那くん。遼賀の周りにいる人たちが、それぞれの形で彼を支えます。そして遼賀自身も、病を通じて周りの人たちに何かを残していくのです。人の温かさに触れたいとき、この本は優しく寄り添ってくれます。

医療や闘病をテーマにした作品が好きな人

医療小説や闘病記が好きな人には、特におすすめです。

ただし、この作品は典型的な医療ドラマのような展開はありません。

むしろ、医療現場のリアルな空気感と、患者としての心の動きが丁寧に描かれています。現役看護師である著者だからこそ書ける、病院という場所の持つ独特の雰囲気。そこで交わされる何気ない会話や、治療の合間の静かな時間。こうした描写に心を動かされる人は多いでしょう。

あらすじ(ネタバレあり)

ここからは物語の詳細なあらすじを紹介します。結末まで触れますので、まだ読んでいない方はご注意ください。

33歳、突然のがん宣告

物語は、東京の五反田でイタリア料理店の店長として働く笹本遼賀が、大学病院で胃カメラの検査結果を聞くシーンから始まります。

33歳という若さで告げられたのは、悪性胃がんという診断でした。

手術日も決まり、家に戻った遼賀は「なぜ、自分が」という思いに打ちひしがれます。忙しいながらも充実していた日常が、この日を境に一変してしまったのです。恐怖におののき、へたり込む遼賀。この描写には、がんを宣告された人の心理がリアルに表れています。

15歳の雪山遭難と弟との絆

そんな遼賀のもとに、岡山で体育教師をしている双子の弟・恭平から荷物が届きます。

中に入っていたのは、オレンジ色の登山靴でした。

それは15歳のとき、登山好きの父に連れられて登った冬山で遭難した際に、遼賀が履いていた靴です。吹雪の中、その鮮やかなオレンジ色の靴が目印となって、遼賀は生き延びることができました。弟からのメッセージは明確でした。「あのとき生きるために進んだように、今も進め」と。

恭平の出生にまつわる秘密

物語が進むにつれ、遼賀と恭平の関係にまつわる秘密が明かされていきます。

双子として育った二人ですが、実は血のつながりには複雑な事情がありました。

それでも兄弟として、いや、兄弟だからこそ築いてきた絆。遼賀が泉に語る恭平への想いには、読者も胸を打たれます。家族というのは血のつながりだけではなく、共に過ごした時間と互いを思う気持ちで作られるものだと、この物語は教えてくれます。

看護師・泉との再会

病院で偶然再会したのが、高校時代の同級生で今は看護師をしている矢田泉でした。

泉は遼賀の担当看護師として、彼の闘病を支えることになります。

でも泉自身も、プライベートで心の中にモヤモヤを抱えていました。遼賀との再会と彼の闘病を通じて、泉は自分自身の問題とも向き合っていきます。患者と看護師という立場を超えて、二人の間には深い絆が生まれていくのです。

物語の結末に込められた想い

遼賀は死を受け入れながら、それでも淡々と生きていく姿勢を貫きます。

大仰な悲壮感もなく、ただ日々を大切に過ごすこと。

物語のラストには、登場人物たちのそれぞれに希望が見出されます。遼賀が生きた証は、彼が関わった人たちの心に確実に残っていくのです。死をテーマにした物語でありながら、読後感が温かく前向きなのは、この結末があるからでしょう。

心に残る登場人物たち

この物語の魅力は、登場人物一人ひとりが丁寧に描かれていることです。それぞれのキャラクターには、読者の心に残る何かがあります。

笹本遼賀:静かな強さを持つ主人公

遼賀は、よくできた人だと感じる読者が多いようです。

店長として店を心地よく整え、従業員にも恵まれた充実した日々を送っていました。

でも、がんを宣告されてからの彼の姿は、決して完璧なヒーローではありません。恐怖に打ちひしがれ、絶望する場面もあります。それでも、少しずつ現実を受け入れ、前を向こうとする姿には、人間の持つ本当の強さが表れています。弱音を吐かない人だからこそ、その孤独な闘いが胸に迫るのです。

弟・恭平:元高校球児の熱い心

体育教師として働く恭平は、元高校球児でもあります。

兄の遼賀とは対照的に、感情を表に出すタイプです。

オレンジ色の登山靴を送ったのも、言葉では伝えきれない想いを形にしたかったからでしょう。遼賀に対する恭平の励ましは、時に不器用ですが、その熱い心が伝わってきます。兄弟の絆というものの深さを、恭平の存在が教えてくれます。

看護師・矢田泉:同級生でもある支える存在

泉は、遼賀の高校時代の同級生であり、今は看護師として彼を支える立場にいます。

プロとしての仕事をこなしながら、個人的な感情も抱く複雑な立場です。

でも泉自身も、遼賀との再会を通じて成長していきます。自分の仕事との向き合い方を考え直し、プライベートの問題とも向き合うようになります。患者を支えることで、自分自身も支えられている。そんな看護師のリアルな姿が描かれています。

母の言葉に込められた家族への愛

遼賀の母親は、多くを語らない人物として描かれています。

でも、その言葉の一つひとつには、深い愛情が込められています。

息子ががんだと知ったときの動揺、それでも平静を装おうとする姿。母親としての強さと弱さが、リアルに表現されています。親子の関係というのは、言葉にしなくても伝わるものがあります。母の存在が、遼賀にとってどれほど大きな支えになっていたか、物語を読み進めるうちにわかってきます。

バイトの高那くんが教えてくれること

遼賀が店長を務める店で働くバイトの高那くんも、印象的な存在です。

若い彼の素直な反応や言葉が、時に遼賀の心を軽くします。

人は誰かに影響を与え、誰かから影響を受けて生きています。遼賀が店長として高那くんに教えてきたこと、そして高那くんが遼賀に気づかせてくれること。世代を超えた人と人とのつながりが、この物語には温かく描かれているのです。

本を読んだ感想・レビュー

ここからは、この本を読んで私が感じたことを率直に書いていきます。この作品には、読む人それぞれに響くポイントがあるはずです。

「弱音を吐かない人」の孤独な闘い

遼賀は、周りに心配をかけまいとする人です。

そういう人の闘いは、実はとても孤独なのだと気づかされました。

「大丈夫」と言いながら、一人で抱え込んでしまう。周りはそんな彼を「強い人」だと思うけれど、本人はただ必死に平静を装っているだけかもしれません。現実にも、こういう人は多いのではないでしょうか。弱さを見せられない人の心の内を、藤岡さんは丁寧に描いています。

家族の絆は意識して作り上げるもの

この物語を読んで、家族の絆というのは自然に生まれるものではなく、意識して作り上げていくものだと感じました。

遼賀と恭平の関係も、出生の秘密があったからこそ、より深く結ばれたのかもしれません。

普段は照れくさくて言えない「大切に思っている」という気持ち。でも、それを伝える努力をすることで、家族はより強く結ばれていきます。当たり前の存在だと思っていた家族に、改めて感謝したくなる作品です。

雑草を抜くように毎日を丁寧に生きる

作中に出てくる「雑草を抜く」という表現が、とても印象的でした。

派手なことをするのではなく、日々の小さなことを丁寧に積み重ねていく。

それが生きるということなのだと、遼賀の姿が教えてくれます。店を整え、従業員と向き合い、家族と過ごす。そんな何気ない日常の一つひとつが、実は奇跡のような大切なものなのです。私たちはつい、大きな夢や目標ばかりを追ってしまいがちですが、足元にある幸せに気づくことの大切さを思い出させてくれました。

オレンジ色に込められた希望の意味

タイトルにもなっている「オレンジ色」が、この物語の核心です。

雪山で遭難したとき、オレンジ色の靴が目印となって遼賀は助かりました。

そして今、がんと向き合う遼賀にとって、あの靴は希望の象徴となります。暗闇の中で光る明るい色。絶望の中でも前を向くための目印。オレンジという色が持つ温かさと明るさが、物語全体を包み込んでいます。きっと読み終わった後、オレンジ色を見るたびにこの物語を思い出すでしょう。

涙が止まらなかった場面

この本を読んで涙が出たという感想は、とても多いです。

でも、どこで泣けるかは人それぞれだと思います。

私は、遼賀が弟への想いを語る場面で涙があふれました。言葉にならない感情が、静かに伝わってくるあのシーン。感動を誘おうとしていないからこそ、心の奥深くまで響いてくるのです。涙を流すことで、読者自身の中にある大切な感情も一緒に流れ出ていく気がします。

「ありがとう」と言える人生の美しさ

遼賀が最後まで貫いたのは、感謝の気持ちでした。

理不尽な病に襲われても、彼は周りの人たちに「ありがとう」と言い続けます。

それは決して諦めではなく、自分の人生を肯定する姿勢です。どんな状況でも感謝できる心を持つこと。それが人間の美しさなのだと、この物語は教えてくれます。読み終わった後、誰かに「ありがとう」と伝えたくなる。そんな温かい気持ちにさせてくれる作品です。

読書感想文を書く場合に押さえたいポイント

学生の方や、読書感想文を書く必要がある方のために、この作品で押さえておきたいポイントをまとめます。

自分だったらどう生きるかを考える

読書感想文で大切なのは、物語を自分の人生に引き寄せて考えることです。

もし自分が遼賀のような状況になったら、どう感じ、どう行動するでしょうか?

これは決して他人事ではありません。突然の病気、事故、災害。人生にはコントロールできないことがたくさんあります。そんなとき、自分はどう生きたいのか。この本を読んで考えたことを、正直に書いてみてください。正解はありません。あなたの率直な気持ちこそが、最も価値のある感想文になります。

印象に残った言葉やシーンを選ぶ

物語の中で、特に心に残った言葉やシーンを一つか二つ選びましょう。

それはなぜ印象に残ったのか、自分の経験と結びつけて考えてみてください。

例えば、オレンジ色の登山靴のシーンに心を動かされたなら、それはなぜでしょうか。もしかしたら、あなた自身も誰かからの励ましで前を向けた経験があるのかもしれません。本の内容と自分の経験を結びつけることで、感想文に深みが出てきます。

家族や大切な人との関係を振り返る

この作品は家族の絆を描いた物語でもあります。

読みながら、自分の家族や大切な人のことを思い浮かべたのではないでしょうか?

普段は照れくさくて言えない感謝の気持ち、当たり前だと思っていた家族の存在。この本を読んで、そういったことについて改めて考えたことを書いてみてください。感想文は、自分の気持ちを整理する良い機会にもなります。書くことで、大切な人への想いがより明確になるかもしれません。

「生きる」ことの意味について書く

最も深いテーマとして、「生きる」ことの意味について考えてみましょう。

遼賀は限られた時間の中で、どう生きることを選んだのか。

それを見て、あなたは「生きる」ことについて何を感じたでしょうか。命の長さではなく、どう生きるかが大切だということ。日々を丁寧に過ごすことの意味。こうした普遍的なテーマについて、自分なりの言葉で表現してみてください。難しく考える必要はありません。素直な気持ちを書くことが、一番伝わる感想文になります。

作品のテーマとメッセージ

この作品には、いくつもの深いテーマが織り込まれています。それらを読み解くことで、物語の味わいがより深くなります。

命の長さではなく、どう生きたか

遼賀は33歳という若さで、命の期限を突きつけられました。

でも彼が選んだのは、残された時間を嘆くことではなく、その時間をどう生きるかでした。

私たちは誰もが、いつか終わりを迎えます。それが明日かもしれないし、何十年も先かもしれません。でも大切なのは、その長さではなく、どう生きたかということ。遼賀の姿は、そのことを静かに、でも強く訴えかけてきます。長生きすることが幸せなのではなく、自分らしく生きることが幸せなのだと教えてくれる作品です。

人は誰かに支えられて生きている

遼賀の周りには、彼を支える人たちがいました。

でも同時に、遼賀もまた誰かを支えていたのです。

人は一人では生きていけません。誰かに支えられ、誰かを支えながら、互いに影響を与え合って生きています。看護師の泉は遼賀を支えながら、遼賀から多くのことを学びました。弟の恭平は兄を励ましながら、兄への想いを再確認しました。こうした相互の関係性が、人生を豊かにしていくのだと、この物語は教えてくれます。

日常の奇跡に気づくこと

当たり前だと思っていた日常が、実は奇跡の連続だということ。

朝目覚めること、誰かと話すこと、食事を楽しむこと。

こうした何気ない日常が、どれほど尊いものか。遼賀はそれを病気になって初めて実感します。でも私たちは、何かを失ってからでないと、その大切さに気づけないものです。この作品を読むことで、今ある日常の奇跡に気づくことができます。明日も同じ日常が続くと思い込んでいませんか? 今日という日は、二度と戻ってこない特別な一日なのです。

弱さを見せられる関係の尊さ

遼賀は弱音を吐かない人でした。

でも、本当に大切な関係というのは、弱さを見せ合える関係なのかもしれません。

強がることで守られるものもありますが、弱さを見せることで深まる絆もあります。泉の前で、遼賀は少しずつ本音を語るようになります。それは彼女を信頼しているからです。完璧でいようとするのではなく、ありのままの自分を受け入れてもらえる関係。それこそが、人生において最も尊いものの一つではないでしょうか。

現代社会とのつながり

この物語は、単なるフィクションではなく、現代社会とも深くつながっています。

がんは二人に一人がかかる時代

今や日本人の二人に一人が、生涯のうちにがんになると言われています。

つまり、この物語は決して特別な人の話ではないのです。

自分自身が、あるいは家族や友人が、いつがんと向き合うことになるかわかりません。その意味で、この作品は現代を生きる私たち全員に関係のある物語です。がんという病気を通じて、生きることの意味を問い直す。それは今を生きる私たちにとって、とても重要なテーマなのです。

医療現場のリアルな姿

現役看護師である藤岡さんが描く医療現場は、とてもリアルです。

ドラマのような劇的な展開ではなく、淡々と続く日常としての医療。

患者さんと医療スタッフの何気ないやりとり、病室の雰囲気、治療の合間の静かな時間。こうした描写は、実際に医療現場にいる人でなければ書けません。医療崩壊が叫ばれる今、医療現場で働く人たちへの理解を深めるという意味でも、この作品は価値があります。

家族のかたちは一つじゃない

遼賀と恭平の関係に象徴されるように、家族のかたちは多様です。

血のつながりだけが家族ではありません。

現代社会では、ステップファミリーや養子縁組、シングルペアレントなど、家族のかたちは多様化しています。でも大切なのは、形ではなく、互いを思う気持ちです。この作品は、「家族とは何か」という問いに、一つの答えを示してくれます。血のつながりがすべてではなく、共に過ごした時間と想いこそが家族を作るのだと。

コロナ禍で改めて感じる日常の大切さ

コロナ禍を経験した私たちは、日常が突然失われることのリアリティを知っています。

会いたい人に会えない、行きたい場所に行けない。

この作品が描く「当たり前の日常が失われること」は、以前よりもずっと身近に感じられるようになりました。遼賀が病気によって失った日常と、私たちがコロナ禍で失った日常。状況は違えど、その喪失感には共通するものがあります。だからこそ、今この作品を読むことには、特別な意味があるのかもしれません。

なぜこの本を読んだ方が良いのか

最後に、私がこの本を強くおすすめする理由を伝えさせてください。

今を生きることの意味を教えてくれる

私たちは日々、忙しさに追われています。

でもこの本を読むと、「今」という瞬間がどれほど大切かを思い出させてくれます。

明日も同じ日常が続くとは限りません。だからこそ、今日という日を大切に生きること。遼賀が教えてくれるのは、そんなシンプルだけれど忘れがちな真実です。この本を読んだ後、きっとあなたの「今日」の見え方が変わるはずです。

誰かにとっての大切な人になりたいと思える

遼賀がそうであったように、私たちも誰かにとっての大切な存在でありたい。

この本を読むと、そう思えてきます。

自分が誰かの人生にどんな影響を与えているのか、普段はなかなか考えません。でも、あなたの存在が誰かを支えているかもしれないし、あなたの言葉が誰かの希望になっているかもしれません。この作品は、人と人とのつながりの尊さを教えてくれます。そして、もっと誰かを大切にしたいという気持ちにさせてくれるのです。

感謝の気持ちを思い出させてくれる

「ありがとう」と言える人生は、美しいと思いませんか?

この本を読むと、感謝することの大切さを改めて実感します。

日常の中で当たり前だと思っていることに、実は多くの人の支えがあります。家族、友人、職場の同僚、すれ違う人々。すべての人に感謝できる心を持つこと。それが人生を豊かにする秘訣なのかもしれません。遼賀の姿を見て、私も誰かに「ありがとう」と伝えたくなりました。

人生の節目で読み返したくなる一冊

この本は、読む時期によって響くポイントが変わる作品だと思います。

若いときに読めば、生き方について考えるきっかけになるでしょう。

年齢を重ねてから読めば、これまでの人生を振り返る機会になるかもしれません。家族ができたとき、大切な人を失ったとき、人生の岐路に立ったとき。それぞれの節目で読み返すことで、新たな発見があるはずです。一度読んで終わりではなく、何度も手に取りたくなる。そんな本こそが、本当の名作なのだと思います。

まとめ

『きのうのオレンジ』は、命と向き合うことを通じて、生きることの意味を静かに問いかける作品です。

読み終わった後、きっとあなたの心には温かいものが残るでしょう。

この本が教えてくれるのは、特別な何かではありません。日々を丁寧に生きること、周りの人を大切にすること、感謝の気持ちを忘れないこと。当たり前のようで、でも実践するのは難しいことばかりです。もしあなたが今、人生について考えたいと思っているなら、あるいは大切な人への想いを再確認したいと思っているなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。オレンジ色の温かさが、あなたの心にも灯るはずです。

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